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千七百八十八年

天明八年戊申   七十一歳

誹風柳多留二十二編板行

五月二十九日柳多留の編者たる呉陵軒可有(木綿)没す 亨年墓所不明 辞世の句有り

雲晴れて誠の空や蝉の聲

呉陵軒可有は明和二年以来誹風柳多留を続刊して盛んに柳風を鼓吹し

斯道に貢献したる功績は実に顕著なりと雖もその事跡に至りてはまだ管見の及ばざるところなるを以て詳かなることを知らず されど及ぶ限りの努力を以て研覈しつつあれば柳多留の板元たる花屋久次郎の経歴と共に之を明らかならしむる機会あるべきを信ず

 

梁川星巖生

足了庵禾月生

仙鶴堂生

萩野梅塢生

 

正月四日文珠九助没年六十餘 山城伏見年寄役を務む侠骨にして伏見義臣と称せらる

正月十二日野士雄没年三十三

正月二十三日丸屋九兵衛没伏見の義民

二月二日江村北海君錫没年七十六

二月十二日野村其梅没年七十 通称文右衛門 保松庵と号す 辞世

願はくは無為の都を住ところ

四月七日花街没 辞世の句あり

枯枝やはかなく残る蝉の聲

四月二十四日角田青渓没

五月八日大江蘭田没年三十四

五月二十八日二代目山嵐七五郎舎丸没年五十八

五月櫻川杜芳没

六月十二日英一蜂(二世)一挺没

六月十三日二代目中村十蔵没

六月十四日澁井太室没年六十九

六月二十八日八木五株没年六十六 化龍館と号す 辞世の句あり

いちふ世就のいた心ぞ蚊帳の中

六月二十九日中神九左衛門蓋峰没

七月十六日植溜季梁然々居士没年四十三

七月二十四日田沼意次卒年七十

七月中村敲石没匍匐庵と号す 辞世

契りおく松や幾とせ若みどり

八月三日鳥山石燕没年七十八(或云七十六)フキボカシを工夫して印刷せる鳥山彦を著して名あり

八月二十一日関敬明東山没年三十八

九月二十一日中村佳山没 蘭石齋と号す 二世蘭石の點業を継ぐ

十月二十七日北澤遜齋没年八十三

十一月九日内山賀邸椿軒没

本年春 横田柳几布袋庵没

 

釋遲月(空阿上人)奥州に行脚す

加藤曙薹都を出づ

董初懐紙興行

上島鬼貫五十回忌

正月二十九日皇居炎上

二月松平定信に政事補佐の事を面命せらる

同月二十五日根岸肥前守を京師に遺し罹災の朝臣へ米金を贈らる

三月二十二日定信に皇居造営の事を命せらる

柴野彦助(栗山)召されて儒員となる 蜀山人の金曾木に曰 栗山(彦助)二洲(良助)寒泉(清助)登庸せられし時川柳點に三助に六百俵の御費当時学者の禄二百俵なればなり

中澤道二心學を江戸に唱ふ

此頃長谷川町にて売出せし梅が枝でんぶ名物なり 山東京傳「名物梅ケ枝傳賦」の戯作あり

本年五代目市川団十郎日本役者の冠首にて位付大至極上々吉に至る

安永の初年頃より二挺鼓始まり年を追て流行すと云ふ

此年代掘抜き井戸を容易に穿つことを工夫せし者あり大に世に便益を為せり

天明の末市村座春芝居に尾上松陸と云ふ役者加賀見山岩ふじの役にて長局の部屋髪を結せる時被布を髪かけに著るそれより流行 隠居は著ねばならぬことになれり 此事明和誌に見えたり

下谷龍泉寺町の東陽山正燈寺庭中楓樹数株ありて毎秋都下の遺賤斜陽を惜しむの名所にてありしなり 此頃紅葉見といへば当寺の事と心得たる程賑ひしと云ふ 正燈寺より吉原へは近距離にて昔は紅葉を見物して後或は紅葉見を口実に吉原へ行きて遊ぶもの多かりしかばこの紅葉見と遊里に関する川柳の例句頗る多し

正燈寺日暮れを急ぐ紅葉なり

正燈寺妻恋ふ鹿は帰るなり

正燈寺聟は門前払ひなり

正燈寺三の足まで聟はふみ

正燈寺何めんもくに帰るべき

正燈寺俄に風の変る所

正燈寺どうだと云へば知れた事

正燈寺手をかざしては西を見る

正燈寺勿論ままにうそが有り

正燈寺息子無明の酒に酔ひ

正燈寺あとさと笑ひ〱行

正燈寺むこいへどうもいへどうも

正燈寺切りで帰って灸をすえ

正燈寺うれ口のよいもみじなり

正燈寺大切米のさかりなり

正燈寺是がいやたと土手でいひ

正燈寺とうに跡さと笑ハれる

正燈寺伊勢屋の首へ縄をつけ

正燈寺しるしなうては叶ふまじ

正燈寺羽二重にしくはなし

正燈寺中たづによふと土手でいひ

正燈寺高尾が寺と母おもひ

正燈寺おつと皆まて宣ふな

正燈寺まだ素櫻嫌で同意せず

正燈寺ナニ枯ツ葉とすぐ通り

正燈寺あとさと笑ひ〱行

女房と中や絶えなん正燈寺

北国のかたうでになる正燈寺

かうようをもふ吸口に正燈寺

何ものか門をたたくと正燈寺

ぼんのくぼかき〱伯父と正燈寺

緦にはかまふなと正燈寺

女房が禅天魔だと松洞寺

聲がするやうだと笑ふ正燈寺

降りられるとみじんはけちな正燈寺

奥の院階子でのぼる正燈寺

爰許はとうにお立ちと正燈寺

金入レをはたいて見せるせいとうじ

女房をかみふせて行く正燈寺

見習ひも二三人ある正燈寺

妻よばりおきやれとけなす正燈寺

朝ツぱら叱るを聞けば正燈寺

まアうんといひなせなと正燈寺

どこへ〱とおして出る正燈寺

入聟はお慈悲〱と正燈寺

冥利だに一寸寄らうと正燈寺

吉原といつて出るのは正燈寺

じやうがこわいと捨てらるる正燈寺

正仄ねつうら合はぬ正燈寺

請合ふたわれも帰らず正燈寺

ねい〱と四五人帰る正燈寺

大人は六郷息子は正燈寺

極楽とうしろ合の正燈寺

引ツ込思案正燈寺かツかなし

誰そにあつたら正燈寺といやれ

松の洞のと女房はすめぬ顔

禅寺でいちえん承知知せぬは聟

彼地へ行へし禅寺へ顔出し

掃程来ると禅寺で鳴也

古寺の紅葉女郎と化るなり

女房はせいて紅葉の寺といふ

吉原のもみぢのやうな一寺なり

紅葉狩寺の号で女房油断すれ

紅葉狩女房忽ち角がはえ

紅葉狩り女房は内で鬼に成り

紅葉からおらアどうもとべら坊め

さくらより紅葉せわしく咏められ

樹々染て寺を寺にはして置かず

紅葉でもおうりなんしと呼びたがり

紅葉でも萩でもなくてぶらと出る

寺號とは大まちがいな紅葉なり

女房の鬼門にあたる紅葉狩

凡俗に寺を売られる秋の末

しやうとうなやつ紅葉から帰る也

傾城に縁のある木を住持植え

売色の道具と知らず住持植え

それさ紅葉のある寺と母忘れ

まだ暮れぬ紅葉の寺へ息子着き

是がかこつけの寺さと内儀同士

もみぢでもおうりなんしと呼びたがる

吉原は紅葉ふみわけ行く所

吉原へ紅葉をこぼす旋じ風

見る人の無いが紅葉の名所なり

かうじ門いづる事三丁なり

聟用をもみじの下でかぞへたて

紅葉見といつちや出さぬと息子いひ

紅葉とは息子頗虚言なり

紅葉では無いとまま母訴人する

もみぢとかけてうそととくきつい事

紅葉とは古ル句と女房点にせず

もみぢかへ古句〱とてんにせず

紅葉狩今は遊女がたぶらかし

紅葉狩聟やるまいぞ〱

紅葉狩車はわきへおしやられ

紅葉狩どつちへ出ても魔所斗り

紅葉見の鬼にならねば帰へられず

紅葉見に母は去年の実見をし

紅葉見を下女にやかれる恥しさ

紅葉見を実な口ぶりと親仁いひ

紅葉見の振合ひにした手紙来る

紅葉見を来なと出しなに軽くやき

紅葉見にいきやせうかと舌を出し

紅葉から去ればといふは女房持ち

紅葉から袖打振つて聟帰り

紅葉にたへず女房の小言なり

紅葉に絶えず者言ひが出来るなり

紅葉を売りしまひ唐の芋を売り

紅葉のうらに摺古木を提げて来る

紅葉かといへばさん候ふといふ

紅葉踏分けるを母は悲しがり

梅ほどだら〱されぬ紅葉狩

生酔のとかくしくぢる紅葉狩

六段目趣向いぶかし紅葉狩

さあ勢子は揃ひましたと紅葉狩

舟ばたを鼓にうたふ紅葉狩

女には今でも迷ふ紅葉狩

かこつけの手はらひをする紅葉狩

あやふきにちか付イて見る紅葉也

かづけるにてんな所は紅葉也

そこ〱に見るは気のある紅葉なり

懐の冷たいやつは紅葉なり

伯父がわせたで明らかな紅葉なり

悪所とは罰の当つた紅葉なり

一生の名句留守居の紅葉なり

二三ぶくわざと紅葉へよつてのみ

昔もさるためし有り紅葉ハ魔所

今日こそはほんの紅葉と母へいひ

立田姫是より息子うかれそめ

外によきはかりごとなく又紅葉

云イわけにもみじ三葉袖へ入れ

正直な親仁紅葉も萩もくひ

行くときは紅葉で天窓かくすなり

をかしさは素見紅葉を売って出る

女さかしくして紅葉売れぬなり

夜ツ一夜紅葉見るさと女房いひ

金の出た紅葉だのさと内儀いひ

テウ〱と紅葉の枝で亭主ぶち

いつまで見ても紅葉だとそびくなり

ふみやんなと紅葉のそばで一歩かし

女さかしくて紅葉を売り損なひ

たたきあつめ二歩ないは恥紅葉

相講が出来て紅葉をひつたらし

ねぢけ人紅葉まで来ていやといふ

男の狂乱紅葉の枝を持ち

酢とこんにやくは紅葉から帰る也

女房は紅葉を買ってくやしがり

誘ひ人がいいで紅葉をたべました

かうよふをすると紅葉はだしがきき

律儀なもみち行き帰りにあやまち

息子の紅葉焼き直し〱

サア之が紅葉だ見ても見ないでも

秘事はまつ毛だと紅葉を袖へ入れ

四ツ手駕丁度紅葉で葺たやう

雑兵を紅葉の下でかへすなり

眠つたい筈よ紅葉は嘘だもの

落日に紅葉見る気は更になし

嘘もつきあえず紅葉でくらはされ

極腹が立つか紅葉で母がぶち

左様をば紅葉あたりで迷子にし

羽二重で売れば紅葉も品がよし

うつちやつて置けと紅葉でいふ所

夕紅葉道聞く美女の物凄し

貴所はすなをだと紅葉の下を出る

ひつぱりの紅葉とはへと女房聞き

けつちやくをして紅葉を捨てるなり

醫書にもれた事紅葉が癪の種

とりあへず紅葉といつて息子出る

ゆびで手を紅葉の朝で息子打チ

けう〱はつしと紅葉で女房ぶち

未タはやし〱紅葉へ寄りぬへ

草木黄ばみ落ちてかこつけもなし

葺狩は紅葉狩より世帯じみ

おらもむかしハと紅葉の親仁同士

正直なおやじもみじもはぎもかい

目立はつ冬木の中へ紅葉也

見る人の無いが紅葉の名所なり

とんた事恋え御寺の名が高し

一ツ葉も咄しの合ぬもみぢ也

市かへりもみぢ以来の大けんくわ

参考として眞間の紅葉(弘法寺前に在り江戸より三里余)に関する柳句を爰に収録す

眞間から見れば正燈寺遠いとこ

眞間へ来て何のこつたと息子いひ

眞間のつれ米の薪のと話してく

眞間へ行く人は女にびれつかず

眞間へ二度さぞや勿体ないといふ

眞間の紅葉は中川の灯が苦労

眞間ならままさと親仁地口なり

目がさめて眞間の紅葉をほんに見る

地へ足のつく人ばかり眞間へ行き

昨日は眞間へ行ってのと跛売る

ささといふものはと眞間で御笑ひ

あした眞間夕べに道を聞いている

隣から百かりて来て眞間へ行き

正直な紅葉は足に豆が出来

関所を越えて馬鹿らしい紅葉狩

あらためにあふとはかたい紅葉なり

紅葉の庭つぎ〱の橋を越し

正とうな紅葉は利根の川向ふ

もみちより饂飩をほめる下卑た奴

饂飩屋の見世にびつこやわらじくひ

そりや笠をぬいだりけちな紅葉狩

やれ遠いぞとどこかの紅葉を出し

嘘でない紅葉は二度と見に行かず

見物はままへかり人は正燈寺

ようかし眞間へいかうぞと親仁いい

女房の聞てる内は眞間噺シ

女房に髪を結せて眞間へ行

眞間の宵断り手紙二三通

鼻のさき斗あらつて眞間へ行

帰りには吉原だぞと眞間へ行

炭のおれと木のはしと眞間へ行

女犯肉食はなれたが眞間へ行

精進けつさいでもどる眞間のむれ

はかりを密ならず眞間しりがわれ

頭痛や風にひけ眞間たつた二人

眞間へ行息子は銭ツ首に着る

眞間の寺面白くない紅葉也

ままの道生酔とてはけがになし

壱本ン立のもみぢへはつれがなし

 

文武二道萬石通(喜三二作行麿画)梓行せらる此作時世当込みの戯作なりとて市中の評判頗る非常にして古今未曾有の流行なりしと云ふ

 

傾城觽(京傳)

夜のはしら(暁䑓等)

一夜流行(成美)

桃の白實(車蓋)

 

 

千七百八十九年

寛政元年己酉   七十二歳

誹風柳多留二十三編板行 如猩の編輯に成る 巻尾に呉陵軒可有追善句集を収録せり

 

岸本田豆流生

有田五双生

江口孤月生

 

二月三日釋孤桐没年五十六 緑綺堂と号す

二月二十二日井上五流齋(三世)没 小西來山の支流也

三月四日(或云三月八日又七月七日)平秩東作東蒙山人没年四十二

三月十四日三浦梅園没年六十七

四月八日香川景平没年六十八

五月十九日入江貞北海没年七十六 通称與右衛門 出羽の人 南湨の義子と成る 伊賀候に仕ふ

五月二十七日深川湖十(四世)没 晋窓、黄花庵、風窓、歓雷、初完車と号す

六月十日長谷川雨柳没 冠木亭、初有柳と号す

六月十九日狩谷宗瑚超花亭没年四十五

七月五日(或云六日)福田練石没年八十八而笑堂、玄兒、石々翁と号す

七月七日戀川春町壽山人没年四十六 狂名酒上不埒 辞世あり

生涯苦楽四十六年即今脱却浩然歸天

八月十九日藤井貞幹没年六十八

九月奥山右膳共進没年六十二

九月九日倉橋蘆仲没 名は勝正通称忠蔵 西湖堂と号す

九月十一日那波魯堂主膳没年六十三

十月十日佛覚翁没年八十九

十月二十三日高井几董没年四十余 幼名小八郎 夜半亭三世、春夜櫻、普明、剃髪して詐善居士と号す 摂津伊丹に遊吟して俄に客死せり

十一月十六日澤井子鳳没 觀魚堂と号す

 

正月獻上物及び女粧玩具等総て奢侈の品を禁せらる

石部琴好著書のことに付江戸払ひとなる

岡田清助(寒泉)召出さる

百眼流行す

三河島不動尊效験ありとて参詣する者多し

天明初年より甘薯のふかし芋売初めしが澌次流行して焼芋も出るに至れり

十月中洲埋地取払ひとなる

蔵宿貸金舊きは棄損新貸は利下を命せらる 此事九月十五日町奉行初鹿野河内守役宅において松下越中守の書付を惣蔵宿共へ申渡されたるなり この沙汰は流石の蔵宿共も余程不平なりしと見え翌年正月の松飾りは三尺許なる女松を祝儀の印しに立てたりと云ふ 蔵宿共が余りに驕奢に長したる為幕府は遂に非常手段に出でて之を戒めたるものならん

本年春京橋黄門定家郷五百五十回忌に相当するを以て全国詩歌連俳等に遊ぶ輩は手向の吟を奉るべき旨堂上より各諸侯へ照会す 此時狂歌本町側の始祖大屋裏住左の狂歌を出詠したり

うぐいすも蛙も同じうた仲間

     経よむもありただなくもあり

定家郷ぢぞうそんをもえらみ入れ

定家郷白歯の右大臣も入れ

定家の門にうぐいすないて居る

おとなをやりこめた歌も定家入れ

本娘の年増も定家一人り入れ

巻軸は定家みそけで撰て置

食ふことが先づ第一と定家えり

故郷へかくした梅を定家入れ

しつけ方迄が定家の作のやう

かこち顔見兼ねて定家百に入れ

さだまつた家のあるのに山で書き

小くら山ばん勝斗百句えり

言の葉の錦をかざる小ぐら山

智ではじめ徳えおさめる小倉山

御硯へしくれの通ふ小くら山

鶯も蛙もなかぬ小倉山

薪負ふ人はのぼらぬ小倉山

穴なしも目なしも交る小倉山

一丁に二人づつ住む小倉山

百人一首かぢをも一人入れて置き

百人一首一人の歌は俵にし

百人一首迄がさがみは戀歌なり

百人一首天神様に気はつかず

百人一首こんぴらさまに気がつかづ

百人一首鎌倉からも口を出し

百人一首きうせんすしも一人見へ

百人一首末に行ほど身もんだい

借宅で出来たは源氏百人一首

命日のしれたが二人り百人一首

百人首絵の出来たのははるか後

絵が無いと男女の知れぬ百人一首

百人におぼこ娘が一人也

百人首落馬した出家をも入れ

百人におぼこ娘が一ト人

百人の業平色師とは見えず

百人のあたまの上にしつけかた

百人のかつえぬやうによみはじめ

百人の中へ一ト聲ほととぎす

百人で一人はひどくおちぶれる

百人でおもて八句へ四季を入れ

百人で九十九人は蛇におぢ

百人で九十九人は病死なり

百人に一人りはさいのかはらなり

百人の内で明け方一ト人聞き

百人の中に目あかし一人居る

百人のうちに大屋は一人り也

百人ので唐紙へ一首かき

百人においれのわるひ花の色

百人はことばもかけぬ花の兄

百人へ脚絆を脱いで並ばせる

百人に有明たつた四ツ也

百人に有明たつた四ツ入れ

百人に女二人は好き嫌ひ

百人ながら鶯に気がつかず

百人の木の丸殿は音頭とり

百人首ゆふべねないのすがたあり

百人の内で関東御一人

百人の中に一首はわたりもの

百の字があるでしまいの御歌なり

百の内目なし図なしも入れて置

百に入れたのは雀にならぬ内

百の内色師はらからならんでる

百の内小町猿丸名大もの

人寄を百人すればひんがよし

こぬ人を入れ百人につがうする

いろ男百の内では神祇なり

米の値を下げたも二人り百に入れ

初音を聞た人百人で一人

鶯に百人ながら気が付かず

穴なしと目なし図なしも百の内

通用も出来ぬも百のうちへいれ

穴なしと図はづれ百人の仲間

ゆかげんをしつたも百の内へ入れ

丁内の中へ穴なしかぞへこみ

御父子して千と百とをおんえらみ

六十は名月百は時雨なり

もろこしで詠んだも百の内へ入り

九十九はえらみ一首はかんがへる

九十九は古歌で一首はあたらしい

九十九人は親の腹から生れ

日本で九十九人は死んだなり

千載にてんぼう百人にめくうら

めくら一人目あき九十九人

ひとりして九十九人の座を定め

人の名歌を九十九首えらみのせ

八十一人め時鳥めつけ

茶の中で一首よんだも入れて置き

一二首は紅葉のてりてえらむ也

つかいに行てかへらぬを一首いれ

京浜に関東べいも一首まぜ

いなだ九郎兵衛がりやう地も一首いれ

てうど能歌をていかはめつけ出し

おふくろをふたり定家はすえておき

おえらみの枝打にもなる紅葉也

着つぬぎつ時雨の亭の筆のさや

秋の露時雨の亭のかきはじめ

鶯は時雨の亭をもれて鳴き

鶯はないが里ツ子集に入りこれや

この目なしの隣穴がなし

我が庵はかりほの庵の八けんめ

我庵の隣は花の色むすめ

我庵は月と花との間なり

奥山と香具山の間にふしの山

中ほとへ定家店つきほどならべ

中程へ定家女郎屋ほどならべ

真白な名歌を赤人がよみ

赤人がよみし昔も今の雪

ふかやぶはさすが蚊の出る御うたなり

深やぶのうたは蚊の出る頃によみ

ほもは夏ぬるるは秋の御製なり

家持をいへもちと読む大屋の子

枇杷の曲行くもかへるも立どまり

おとめとどめて遍昭は何の用

康秀は二百十日に一首よみ

有明もただありあけも名歌なり

人こそしらね頼政のむすめなり

後京極源氏にも出た蟲に聞き

時鳥きいたは後徳大寺なり

ほととぎす後徳大寺の首をなぢ

参考として歌がるたのことを咏める柳句を次に収録す

百人首二つにわつて御なぐさみ

百人を六七人でとりしまき

百人へ脚絆を脱いで並ばせる

百人を五六人して追まわし

百人を茶臼にしても嫁は取

百枝はとられやせんと嫁はいひ

嫁の手が百たび出るとしまひなり

古歌を百よんで仕廻ふと畳ミ也

御延引古歌を並べておたのしみ

歌がるた無筆なやつは箱のやう

歌がるたちょき〱おてしかられる

歌がるた手ひどく乳母はいぢめられ

歌がるた嫁取ったのに下女さがし

歌がるた袋の巤嫁はとり

歌がるたにも美しい意地が有

歌がるたごぜは無筆ととちぐるひ

歌がるた又かとごぜは淋しがり

歌がるた乳母はにぎつてたたきつけ

歌がるたなどに事よせなめたがり

歌がるた見物をするはづかしさ

歌がるたお局くされどうしなり

歌がるたとふ〱下女はどぶを喰ひ

歌がるた下女またぐらへやたら入レ

歌がるた下女またぐらへ取りためる

歌がるた下女引ツ掻きに罷出る

歌がるた女の中へまけに出る

歌がるたよろ〱ものでけいど入れ

歌がるた嫁こまや程つんで置き

歌がるた気色どらぬともつと取れ

歌がるた仲間へむす子まぎれこみ

歌がるた好いた男を入れたがり

歌がるた大方嫁にしよしめられ

歌がるた子の刻迄がかぎりなり

歌がるた人の丁場を嫁あかし

歌がるた乳母は十まいこみて入り

歌がるた嫁は勝ツばてまける也

歌がるた一枝持てしら婦来る

歌がるた手かすくないと聟が出る

歌がるた下女かたすみて大いびき

歌がるた姑かくして火にくべる

歌がるたやろう畳のうへてなし

歌がるた大先生と嫁をほめ

歌がるた人といふ字に手が五ツ

歌がるた馳走に出して気の毒さ

歌がるた乳母のおいどを度々詮議

歌がるた扨おそろしく取る女

歌がるた手を負はぬのは娵ばかり

歌がるた娵いもじへも寄せつけず

歌がるた山嵐のやうにまきたてる

歌がるた例の通りに嫁が勝ち

歌がるた娵とばいあふいやなやつ

歌がるた娵糸をつけ引くが如し

歌がるた人づてとらで下女とれず

歌がるた人こそ見えぬ娵はとり

歌がるた娵もみ上ケを撫て居る

歌がるた聾と下女は餅をやき

歌がるたばくちなら下女真裸

歌がるたあふさかやまで娵こごえ

歌がるた大手をひろげ姑トとり

やすひでをまかけるけちな歌がるた

鶏の啼迄馬鹿なうたがるた

尻まくりくらとはあらい歌がるた

娵の手の九十度出る歌がるた

春過ぎて夏をいはさぬ歌がるた

娵が来てばた〱と摘む歌がるた

毛の生た手は叩かれる歌がるた

床もやみ歌がるた止む気のおもさ

あかつきの枕にたらぬかるた箱

あをのけにまくでかるたの品ンがよし

かるたの助言にてからさ〱

秋の田へ白い手の出るおなぐさみ

花嫁の手際秋の田苅る如し

嫁の世事先秋の田は苅残し

ちぎれた歌を花嫁はくツつける

振袖で度々上の句をくづし

ふり袖をうごかす度に歌がへり

鶏が鳴に天皇秋の田

夜更けるぢやないかと殿も御次迄

小くら山嫁こねとりのよふに取り

むだな手は百に一ツも娵出さず

胴切の和歌を継くのが娵上手

時鳥月をも見せず娵はとり

天智天娵おつとよし〱

夜ぞふけにけりと下の句娵仕廻ひ

業平を小町へかさね嫁はにげ

ひんのいい勝負場中にたつた百

下女手柄百人の首三つとり

大江山下を取り下女鬼の首

娘どしかけにしてとる千早ふる

小倉山素見している恥しさ

生酔に百人おいてみんなにげ

生酔ともに百壱人リ置イてにげ

壱人リ逃弐人リ逃生酔と歌

烏帽子狩衣ぬぎすててかるたの絵

かるたなどならべてけちな道具みせ

むべ山のなかへ嵐の年始きやく

お歌さんにはかなやせぬと娵にいい

お百さんお歌さん来なはじめやす

 

本年待乳山晴天社境内に在る戸田茂睡の古碑両断せるを修復し別石を以て之を覆ふ 其の碑陰に来歴を誌す 姪孫櫛分規貞の撰文門馬永胤の書也

あハれとは夕越て行人も見よ待乳の山に残す言の葉

待乳山から見下ろして企てる

吉原の本地はまこと待乳山

聖天は舟とかことの相の山

名木を越すとお團の下へ着き

賑やかさ浴油の下で舟がふね

 

十月蝦夷国後島乱あり松前志摩守之を平ぐ

 

力士谷風梶之介小野川喜三郎横綱免許 又九紋龍といへる角力取行ハる

よこづなはへのこに神酒上げぬばか

 

女の髱差は鯨にて造りしものなるに寛政の始より張子にて拵え出す又鯨の鬢差は宝暦の末より用ひ今は竹を用ゆる事となれり 此事明和誌に見ゆ

 

江戸に於ける新春の一景物たりし辻寶引さございは寛政の神禁あつて止む

さございをかき根の内へ弐本引

寶引にかり親のあるうつくしさ

さございへ下女はお立ちと呼びに行

寶引はどうか柳弐鞠のやう

さございは長屋でいつち稼ぐやつ

宵の内先づ寶引と申上げ

寶引のきはどひ中で手を堀り

ほう引にまでかりおやを嫁たのみ

松の内皆いかさまに引つかかり

歌かるた下女寶引にしなといふ

福引に摺古木とつて縁近し

 

地紙売といふものあり正徳此の遺風にして宝暦より天明盛んに行われたりしが寛政に至りて絶えたり 蜘蛛の糸巻に曰く、扇の形をしたる箱をいくらも重ねたるを肩におきあふぎ〱とよびあるく其姿は染めゆかたに白き脚半でん〱ばしよりおほかたはなまめきたる男あみ笠をかぶり呼び入るれば地紙を見せ其座にてをりてうるなり、小川顕道の塵塚談に、扇地紙売の事予若年の頃は夏に至れは地紙形の箱を五ツ六ツも重ね肩へかつき売歩行ける買人ありて直段極ればすくに其座にて折立て売し也又持帰り折立翌日持来るも有り近歳ハ地紙売一切来ウす皆人京都下りの折扇を持事になれり 近頃は扇に伊達を飾る人はさらに見へず右の地紙うりは伊達衣服を着し役者の聲色或は浮世物似なとをして買人へあいきやうをしてうれるか多く有しなり刻多葉粉売にも此類有ける森山孝盛の賤のをた巻に、其頃は先地紙売とて四月半にもなれば綺麗なるひとへ物に(極暑といへとも単物足袋を用)足袋雪蹈はき地紙の形にこしらへたる箱を三ツ計其間に骨を入たる角に長き箱を組入馬の胸がひにて中ゆひをして肩にかけ地紙〱と呼て売歩行たり屋敷〱の台所へ呼込て扇を物好にあつらへ又即席に折もありよき慰にて下女はした迄地紙うりの男つきによりて取廻していらぬ扇を折らすものも有けり云々又山東京伝画作の黄表紙江戸生艶気樺焼に地紙売の図あり其註に「艶次郎は望の通り勘当をうけけれども母の方より金は入用次第に送る故何不足なけれども何ぞ浮気な商売をしてみたく色男のする商売は地紙売だらうとまた夏も来ぬに地紙売と出掛け一日に歩いて大きに足へ豆をでかし」云々尚其の詞書きに「そとをあるくと日にやける困ったものだまた惚れたそうだ色男もうるさいぞ」と記しあり以て其の当時の風俗を知るべし

地紙売よし町以後はなどといひ

地紙売母に逢ふのも垣根越し

地紙売油壺から出てあるき

地紙売くされな文もことづかり

地紙売芝の屋敷でくどかれる

地紙売目につく迄は指をなめ

地紙売一ト聲呼んぢや鬢を撫で

地紙売おぞうか戀の敵なり

地紙売我慢が過ぎて風をひき

地紙売かがみとぎをばくぼく見る

地紙売しまい左の者どもになり

なまめいた聲で呼ばれる地紙売

暮れかたに二人で通る地紙売

尻持に和尚を持て地紙売

名を聞て隅々へ書く地紙売

しこなしで門止めにあふ地紙売

女房になぶられて出る地紙売

盆過は袖をぬひこむ地紙売

手拭のすみをくわへる地紙売

我慢して中形を着る地紙売

うぬぼれて隔日に剃る地紙売

地紙うり日のてるほうへかたをかへ

地紙売馬のお古ルで箱をしめ

地紙やと咄のあわぬかかみとき

座元がとうしてこうしてと地紙売

地紙売使に出るを見てまける

地紙売大はんにや程くり返し

地紙売値のなる迄は浪が打ち

結ぶ場をくはえて歩く地紙売

むねくそのわるいはなしを地紙する

見えばうでしつきやくまけの地紙売

小間ものと地紙みそごい咄をし

書くとこを見て参ったと地紙うり

商売にさわる地紙屋のあばた

かかみとぎ地紙の後へ座をかため

地紙うり梅幸に似て二度呼ばれ

めしたきは後へほれる地紙売

入湯をしてから地紙売に出る

女のくさつたやうなが地紙売

 

すた〱坊主の来る年は世の中よいとやしやすと唄ひ歩行きし物乞は享保中より行ハれしが此頃に至り絶えたりと云ふ 守貞漫稿に曰く、すた〱坊主昔は三都とも有之今は京坂にあり江戸になし寒風の日乞食坊主裸體にて縄の鉢巻をしめ注連縄を腰簑の如く巻き手に三五寸の竹を割かけ銭五七文を串に貫きわりかけの竹に挟み是をふりならし踊て云詞に「すた〱すた〱すた〱ぼうづのくるときはこしには七九のしめをはりあたまにしつかつわをはめて云々」

すた〱は飾りをわけて小便し

品川のすけんすた〱坊主なり

 

元祖川柳時代に行はれし子堕し中條流婦人醫に関する柳句により当時の恐怖すべき堕胎の悪風を示すべし

中條は物もふはむじきかぬ医者

中條のしづかにくらすをそろしさ

中條はむごたらしい蔵をたて

中條へ身銭を払ふいくじなし

中條は手斗出して水を打

中條を御菜は母でひき合せ

中條へめづらしいもののごぜがとれ

中條へ五ツ月置いて同じ顔

中條へは錦の師匠へ五枚なげ

中條へ又きやしたはしやれたもの

中條へ供には過ぎた男なり

中條で下女黒鯛のこともいひ

中條で本のかくごのまへを出し

中條へむす子けい母をつれて来る

中條のろじに手代のものあんじ

中條へ内ふくらしいあばた来る

中條の門にたつてるのが相手

中條へたのみましようはただの用

中條へ娵のかつ込むはなれ馬

中條の跡明店でややしばし

中條は這入りがつてを三とこあけ

中條の引札で下女くどかれる

中條へごさいの女房つれて行き

中條の目を引つこぬくもめんもの

中條はならぬと宿が申します

中條へ行より外のことぞなき

中條はいはば手のよひ人殺し

中條の巧者は一人でころし

中條でほつたんからのことをいひ

中條の下女は前車をじろ〱見

中條の娵罪らしく孕で居

中條のなすを見るのはまんがまれ

中條の晴れになんどと下女ねだり

中條へ若衆の通ふはんじ物

中條でたび〱おろすかげまの子

中條ではなをならしてしかられる

中條へ行にふんとし下女ねだり

中條はうしろくらくも手間を取り

中條は和合の箱のこはしかた

中條は腹を減らして飯を食ひ

中條も仏具の内はこハされす

中條の少シこなたで駕籠を出る

中條ですみだといつてかつけされ

中條へのめ〱とくるいろ男

中條でする開帳は百年め

中條へのめ〱とくるいろ男

中條は孕み女のまたをさき

中條へぬいたのも来るふしぎなり

中條の引札おろし値段なり

中條の何を祭るか御燈明

子おろしへ御さいの女房連て行

おもしろい跡中條で待って居る

おそろしさ中條金をかすうわさ

しづウかなとこで中條時行なり

間のわるさ中條の前二度通り

穴釣のやうに中條治療をし

ふしやうぶしように中條へ納所行き

みみくちやハ中條流の道具なり

今迄の事を中條水にする

おろし値段に中條は札を引

すたる物なし中條へごぜがとれ

罪な事中條蔵を又一ツ

いつどう来るか仲條は蔵を建テ

ふり袖で中條へ来るすたりもの

御尤様と中條後家へ云ひ

奥様の御推中條までやらず

大つぶれだと藝子云ひ

戸を明けてたすは中條めづらしい

仲條の目を引つこぬくもめんもの

人を殺して世を渡る女医者

人知らぬ金をもうける女医者

おくれの髪をかき分ける女医者

女医者鼻へ紙玉チヨイとつめ

にげ道のいつくらも有ル女医者

ころんだらいつでも来なと女医者

女医者わたりがついてやめに成り

女いしやなぜだかきうにことわられ

今のもさかみ言葉だと女いしや

しかたなくたてかんばんのいしやへ行き

何さ歴々もおろしにござります

仲條に相撲は古いなじみなり

仲條は月を流して日を送り

中條姫のやうなのがおろしにくる

その時は中條といふうしろたて

中條の着てよさそうなさんくづし

仲條へ行ク時おひへねだるなり

はり形は仲條りうの不吉なり

張形が無いと仲條まだはやり

穴釣のやうに治療のさし薬

くらやみの恥を中條すすぐ也

今迄の事を湯にするやかましさ

 

江戸時代に縁切尼寺と称せられて有名なる鎌倉松が岡本慶寺へ婦人の駈入りしことに関して咏まれたる柳句を爰に収録す

松が岡ちつとはじくが納所分

松が岡わらでもたばねさせぬ所

松が岡江戸の内から聞いて行き

松が岡女だてらな会所なり

松が岡三年置けば用に立ち

松が岡あいミ互の癪をおし

松が岡十六文の顔はなし

うつつくが居よふと覗く松が岡

あまでらは男の意地をつぶす所

男なら爰まで来やと娵は逃げ

三年の恋がさめるとりえんなり

千日のがれな事娵思い出し

三とせ見ぬ内にさがみの言葉也

三年に一ト月寺はうけに来る

去り状を有髪のあまに成って取り

あの寺にあるをしつてる小間物屋

ていしゅにあきの方三年ふさがり

娵のかまくら手におへぬ事になり

三年過ぎてあま店へ縁につき

松風を有髪のあまで三年きい

三年立つてから嫁もじまへ也

三年は男日でりの旅にたち

男といふもの千日見ずに居る

岡場所へ娵も三年身をしづめ

一生の遠道を娵おもひたつ

状壱本とるに三年娵かかり

娵にげた其夜はしかも星月夜

陰膳を三年すへる里の母

ここは禅宗と四五人追人也

たつた三年とんせいを娵ハする

尼寺をおしへ雲助百もらひ

魚物をバたちものにして縁をきり

光陰矢の如し娵もう縁が切れ

道中記なんにするのか娵ハ買

常陸の国へ娵逃るむつかしさ

三年の内に歯もはげ眉もはへ

三年が間有髪の尼になり

三年のうちに月代すり習ひ

尼達に毎朝娵はくさがらせ

いい見切潰れたをきく三年目

たつものハ男とそして魚類也

戀しくも尋ねて来ない所へ逃

膝と談合して娵壱人旅

三年が内間男のたいくつさ

十三里先だにたつた四里尋ね

書置のことなむさんと十三里

しんこにてつして娵は十三里

たしかに此道娵のあと十三里

渡場で松のもやうと追手きく

高砂にいびられ娵は松へ逃げ

鎧からくらまで娵の一騎落

みどり子にひかれてお松立かへり

せき込んで去状のでる寺ときき

引からむ縁をかき切る鎌の寺

十三里先で男をそしつてる

仲人を三歳うらみるつらいこと

むづかしき精進をして縁を切り

とんだ娵お寺で年を三つとり

去状をとるうち年を三つふけ

松詣で三年みかき又白歯

雛迄も三歳長持ずまひ也

武夫は日帰娵は三年目

ひろい事まつが岡へのつれが出来

千日かうがんせざればえんがきれ

きつい事十三里有る馬場を乗り

松は替らぬ色だのに縁が切れ

七去の外にもう一つまつがをか

やきもち坂であま寺の道を聞き

かくれんぼ娵のするのは大さわぎ

口で切るのがめんどしく鎌で切り

今入の女中をびくにたちなぶり

二度目には三年ものの女房なり

三とせ見ぬ内にさがみの言葉也

そこまめが十三出来て娵がきれ

先ぐりに去状のくるまつがをか

鎌倉へよこ付ケにして三分也

十三本とふ〱榎娵はこし

娵路銀十三匁持てにげ

三年もかくしをふせたかいはなし

三年立ツて引ツたくる見なれた手

どこへもつてくか千日ぶしをかい

合せものは放レ山をして逃ケ

気が替るまいものか鎌倉で疱瘡

江の島へとてもで参る三年目

追々に追人十三人とほり

かまくらの戻る四ツ手に追手あひ

女房のたびはていしゅをはなれ山

きれいな寺へかけこんでしかられる

おそまきの追人江の島迄参り

女の欠落六郷をさして行き

精進けつさいをして去状をとり

うろたへた女五山をあつちこち

まつケ岡大工にばんをつけてをき

はなれ山とはきつそうなまつがをか

谷七郷をまこついて娵あるき

さんげしな〱よとまつかおか

せんたくに三年かかるまつが岡

八九里行てきかしやれと渡し守

松風を三年尼のぶんできき

井戸や川のぞき六郷さして行

むねがにごらぬでかまくらへは行ず

ふてへやつ三ン年まつて〆ルなり

どこへだか女房だまつてしたくする

鎌倉で今道心を母尋ね

鎌倉へ行四五日はよせつけず

能く〱の事相模まで娵は行き

はなれ山けんとくにする女旅

いくじない形で聞き〱十三里

十三度娵はこんがう力を出し

千日餘精進をして縁を切り

三年目扨こそといふ所へ嫁し

あきらめて居ても便りを松が岡

縁をふつと切ってから松が岡

松が岡花散里となぜいはぬ

松が岡男のためのまづひ岡

盗人をつめて逃す松が岡

張るといふ乳は菊岡松が岡

己待へも来る鎌倉の二ばんばへ

 

此頃青本に白紙黒摺の外題を押したる物の再摺あり 此頃迄は黒本の發兌もありしが寛政の中頃より絶えたり

 

獨楽山人著興詩選梓行せらる

師恩月花集(秋月)

浅草(成美)

 

 

千七百九十年

寛政二年庚戌   七十三歳

九月二十三日元祖柄井川柳翁没す 浅草新堀端(今の栄久町)天台宗龍寶寺に葬る 辞世の句あり 曰く

こがらしや跡で芽を吹け川柳

 

為永春水生

三浦有一生

兒玉逸淵生

 

二月十一日多少庵秋瓜没 初止弦と号す柳居又大蕪門

三月九日劉安生壽山没 諸葛監門人画を業とす

三月十三日北窓庵竹阿没二六庵と号す 馬光門

四月二十日原狂齋没年五十六

四月二十三日元祖中村仲蔵秀鶴没年五十五

六月六日内田南山没年七十三

六月二十一日佛仙没 子日庵 北海坊と号す 一説に天明二年没すと

六月二十二日釣舟清次没

六月二十八日松原素元没年五十四

七月四日片岡秀民没年六十四 俗称大黒屋庄六 新吉原の見番主

七月二十一日篠山光官没

七月二十九日上柳四明没年八十

八月二十六日狩野栄川院典信没年六十二

九月六日山中猶平天水没年三十二

九月十四日三代目大谷廣右衛没年六十七

九月二十二日片山北海没年六十八

清水諸葛没年七十四

 

三月より中村座にて市川柏莚助六の狂言大当也其の名題は助六廊家桜といひ新吉原仲之町の所舞台一面花道まで造り櫻を飾付けしといへり

 

八月皇居成る 十一月新皇居へ還幸せらる 御所、殿上人当時の状況及び平安朝の才媛詩藻等に関する詠史的柳句を爰に収録す

紫宸殿左は忠義右は孝

忠孝の左右にかをる紫宸殿

春夏に片々かをる紫宸殿

九重にかをる左近は花の王

春左近夏は右近が匂ふ也

日月の門は雲井の外になし

雲のうへだから御門も月日なり

山門の菊の根元は十二門

山鳩と化すも冥加な桑の蟲

御きげんを天気といふも雲の上

天顔へ御簾はたなびく雲と見え

君が代の歌は目出たひ苔がはえ

せいひつの合羽十日の雨に濡れ

国に飢なくて正しき御冠

鳳輦の内には御衣も麒麟錦

外を引くものとは見えぬ御所車

土のつく物とは見えぬ御所車

鶏の羽風左右の花がちり

鶏合せ鷹も烏も出仕なり

生きた雛をがんてのかへるとり合せ

雲の上烏もあれば鷹もあり

鷹司鶴御披露の御家柄

前の世で嘸能種をうへつがた

一ツところにしてもそのふにうへつがた

たをやかな音桐つぼの方でする

梅壺とすいな噂も御所のうさ

珠雲の肌梨壺に居る官女

ひあふぎであたまはれば笏でうけ

檜扇に胸の火をする官女達

惚れた公家つけ短冊をして口説き

大内の色事かんじ入て出来

大内に蛸壺のないが残念

地下は桑門大内は桑の門

檜扇へ片目出るほど出来かかり

袴着の女にもある雲の上

官女達頭痛の灸をすへたやふ

官女たち頭痛の灸のやうに見え

額にも星の出ている雲の上

つめりたい柳をつつむ緋の袴

さつきやくに用の弁ぜぬ緋の袴

ちよんのまはならぬおきての緋の袴

宜首尾でチヨンの間出来ぬ緋の袴

しやうかちの官女袴がじれツたい

折にふれ地下をうらやむ緋の袴

緋の袴足のあまりもしづかなり

女だねつきて二代の后也

皇后はいはた帯までこま結び

御后のわる尻をいふ陰陽師

玉座へ津浪花活がおつたをれ

こんりやうの御衣洗濯に二分かかり

御幸まて峯のもみち葉ちらずに

御よだれをおふきなさいと侍従いひ

くねへひつついたをじじうもぎはなし

九重は歯みがきよりもふしがうれ

洛中は男へふしの売れる所コ

束帯は糊の利いたる姿なり

御勅使を天神さまと馬士はいひ

あくびのふたを一本づつ公家衆持ち

矢大臣小鬢に二つ貝杓子

随身の小鬢に二つ風車

八家の長柄は八九寸上をさし

お紐のこよりにかはる御昇進

夫婦公家取繕にするわたし金

夕顔を御ほふしやといふ様な公家

公家衆の生酔しやくをふり廻し

公家の色字数をきめて口説也

公家ならばどうしなさるとかねをつけ

天の川古歌は公家衆も恥のやう

植もので公家衆の不足まぎらかし

ひやうきんな公家笏にて羽子をつき

内職に百の上下公家衆張り

歌留多の絵を敷島の道ならで

大工気のある公家かんなよくつかひ

公家の腰張かならんと左文字

かりぎぬで参内をする貧乏公家

檜扇と笏は屑屋も値をつけず

下げ髪で二分おちますと質屋いひ

つつぱまり次第に立位かぶるなり

御車をひく子に乳は廻りかね

一時に生れて御所の車力なり

下賀茂の窓からめする斗り炭

井戸がへに冠と笏を引上る

山海のちんぶつ公家衆間に合わず

草餅の使ひ公家衆にとめられる

公家にしちや大きな顔と鳥羽でいひ

宇治の大臣は迎向ながら下り

しやうぶ刀ナにて諸卿をおどす也

ふがひないみやすどころの舎人(とねり)ども

丹後への勅使は武者の小路也

沓音高く飛鳥井の御参内

十二ひとへは急度した鞠のじゃま

下手な鞠足をくらへといつたやう

六条の塩はそんだと徳大寺

九重も塩は土扁で通用し

歌の会にこりを打たかふはかり

色白な男らしい名は貫之

篁は重寶に成る歌をよみ

篁は事めいさいによみ置かれ

篁はてにはを種々なものへ付け

篁帰り行所じや無ひといい

酒で詩をつくれば餅で歌をよみ

能因は右の手李白は左の手

能因が雨にかちんと杵の音

雨のふらぬ前は餅とばかりいひ

志賀上人はさざなみが胸にうち

知識すら戀には志賀をかくしかね

煩悩の雲たつ志賀の花ぐもり

鏡を見たは黒主の和歌ざかり

百にない鏡を六歌仙へ入れ

喰積は傘餅は鏡山

いざ立わつて煮てくはん鏡もち

草履打いざ立よつて見て行かん

そこ意地のわるいも見へる六歌仙

口かしの歌にもこりず乙女とは

花より外に知る人もなし落馬

馬から落ちて腰折れの名の高さ

口どめをきれいにされた女郎花

親の為我落ちにきと女郎花

とじめたは乙女落ちたは女郎花

落馬にもこりず乙女をよびたがり

遍昭はもう一ぷくと空へいひ

ぬしや誰花色もやう納め幡

茶の呑める庵は都の辰巳也

茶と鹿で喜撰しば〱寝そびれる

喜撰法師の上の句は所書

お庵はと問はれて喜撰一首よみ

つづかぬと宇治殿百茶かひたまひ

茶の上のくだを集める宇治拾遺

茶と蛍宇治拾遺にはかき残し

山吹をわけ〱蛙一つとり

ひからびた花や蛙を歌袋

いで御覧あれと頭陀から出して見せ

かんなくず蛙と同気相もとめ

朝物の蛙をつめるかんなくづ

かんな屑何になさると橋大工

諸兄卿よの山吹はかへりみず

せんたくでさつぱりとした和歌の論

玉座間近きせんたくは和歌の論

洗はれて水際の立歌の論

まかなくに古今稀なる洗濯し

いざ立よつて見たまへと洗ひ上げ

黒主はそつと照々坊主をし

洗はれて笑はれ草の種をまき

敷島の道にも黒いごまの灰

萍に十二単のうでまくり

萍は歌でも居所定まらず

歌の白波萍のねなしごと

小町の仕事萬葉の洗張

これ見な水に浮草と小町い

角盥諸卿反吐つくやうにより

秀咏の妬ミにも出る角たらひ

さりとては又といふ時かきくもり

上の句でくもり下の句ぶんまける

天帝へ小町大キなねたりこと

天気までいふなりになる美しさ

空色を鼠にそめる美しさ

日の本は空までとどく假名使

さりとては又とよみてのないお歌

うちまきが下ツたかのと小町聞き

歌集にもないことわりや狂歌體

ことわりを云ふ日は小町古袴

でも名歌さりとては又強い雨

傘持は神泉苑へかけつける

小町の手がら洛中へかけこまれ

しつぽりと小町も一度雨にぬれ

雨乞はよめど一生身はぬれず

雨乞はぬれ人の多ひ顔でよみ

雨乞を飛切といふ顔でよみ

雨乞も女はたんと口をきき

雨乞の時分小町も和か盛り

雨乞ひも袖乞もして名を残し

雨乞の歌もくどきがまじつてる

雨乞もしたり鸚勝の真似もする

雨に名を残して花の色はさめ

名高きは五十に二つ足らぬ雨

あるきくたひれ関寺へたどりつき

関寺の姿に花の色もなし

関寺の頃は色紙へ身をまとひ

関寺へ一夜も通ふものはなし

関寺はけんたいふつたむくひ也

関寺の所化衆そんならかけて居ろ

関寺で逢ても口はたつしやなり

関寺で久しひものと勅使云ひ

関寺で勅使を見ると犬がほへ

関寺のそとばたおれたままで置き

口真似も一字ちがつて名歌なり

口真似で小町仇名が一つ殖え

歌をよむ度に小町は名がふえる

名は七つあつて女の要なし

将門のかげ程小町名を残し

七変化したは古今の立おやま

七小町四小町ほどは美しい

七小町気楽なときはなかりけり

勅諚を小町はひとく焼直し

三十字をばかりで一字の返歌也

勅諚はやの字勅答ぞの字也

口答へだに小町をば誉める也

手入らずの婆々ア卒塔婆に腰をかけ

花の色そとばの上にちりかかり

美女の干物が卒塔婆に腰をかけ

おもかげがかはり卒塔婆へヨツトコサ

おもかげは年増盛によんだ歌

面影はあんまり小町虫がいい

美しいままで小町は死にたがり

吼える犬そとばをもつておつかける

しらみなどそとばのうへでつぶしてい

花の色はうつくしけれど實にならず

六歌仙小町は穴がないでもて

六歌仙むすめひとりに婿五人

小町業平四歌仙の目をしのび

歌はよく咏んでも一ツ申分ン

あな有りやなしやの身でも戀歌よみ

とんだよく這入つた夢を小町見る

穴もないくせに小町は戀歌也

又文かそこらへおきやと小町いひ

孕み句は世上へしれて小町なし

小町には大社でも首ひねり

手入らずのばばあとかはる花の色

さめはてて見るかけもなき花の色

うたばかりよくてさツぱりはじまらず

ながめしまに老くちる斧と小野

目にたたぬ支離は小野の小町也

うね〱は盛り落目はさそふ水

花の色香もさめはてて絲すすき

歌道の眼つらぬいた野のすすき

すすきで招いてはもはやほれてなし

白骨に成ても歌はやまぬ也

おのが身をあなめ〱とよぶすすき

歌でさへ穴目〱と身をかこち

はなならばくさめ〱といふところ

それても小町深草にはへははへ

コワ珍事小町に臍が二ツある

少将はすこし風気もをして行き

少将も百には足らぬ男なり

三十一相とも知らず九十九夜

気つよひと気の長ひのか九十九夜

いにしへの気は長かりし九十九夜

つりもつりられたり九十九夜

九十九夜供も同じく九十九夜

ふらせたは一度ふつたは九十九度

〆切の門だに九十九夜通ひ

ほれ帳を九十九夜めにけして置

さりとては又少将こんのよさ

さりとては堅ひ女と公家仲間

馬鹿堅ひ色師四位の少将也

いい女公家を百度あるかせる

ゆく人も百夜とはばか〱し

しやう〱と思ふて百夜通ふ也

よし百夜通ツたとこかはしまらず

少将は榻のあてかきなともやり

のつへらほふに少将ハ気かつかす

もふ一夜来ると無イのをあかす所コ

最う一ト夜通ふと穴をさがす所

色情がかげさりとては惜しいこと

ことわりを雨乞共に百度いひ

百日のがれのことをいふ美しさ

九十九日うつら〱と昼寝をし

九十九で死ぬる命の哀れ也

少将も雪に黄色な穴をあけ

深草で裾の切れたをかたみわけ

鶉取り少将様を見知りごし

鶉きき〱手あぶりをこしらへる

浅草に鳩深草に鶉なく

後少将は六十二夜通ひ

月よりも筆の冴えたる物語

白式部でも書きさうな物語

社をかりて書キそふな物がたり

六十帖も紙の入る物がたり

みなもとは月から浮ぶ物語

藤色を紫にした物語

紫女赤女虚々実々の物語

祭の喧嘩まて書た物がたり

一帖はほたるに光るものがたり

雲かくれから光なき物がたり

上品ンなやうで不義物語なり

性わる物語どれも女作也

物がたり書くころはまだ藤しぶき

物語源氏と平家大ちかび

筆意さへ栄華源氏にうばハれる

石山で出来た書物のやわらかさ

いし山で一わり引けの書物出来

石山の草紙一わり引けで出し

石山も二タ月ほどは紫衣寺也

石山につくねんとした美しさ

石山は女筆指南の元祖也

石山で須磨や明石の物あんじ

石山で二十里外の月をかき

石山で鼻の赤ひも壱人リ書キ

石山の所化衆短冊などねだり

石山で奥中の名を式部書キ

石山のせいぐわんじのと寺は入り

石山で藤紫にさきはじめ

性わる一代記を石山で書

かたい寺見立てて式部かりる也

官女が居ても名のたたぬかたい寺

寺這入してもほまれな官女なり

寺入をして六十帖したため

紫も和泉もとかく寺這入り

我寺を借りて六十帖出来し

ひの衣式部に居どこ奪はれる

大こくのやうに紫式部見え

物語書くうち所化に気をもませ

一二帖まで色文と所化おもひ

下心ありて源氏を和尚ほめ

びり出入先づ経文のうらへ書き

達者にまかせあらすいを書

さし合ひのきわ迄かすり式部書

かんじんのうまみは式部書かぬ也

味ミ迄はかかぬ雨夜の品さため

品さだめのみは月なき夜半に書き

清僧も鰯の鍋はのぞくなり

紫は石の上にも居た女

香の図は末世ににはふ筆のあと

いし〱をたべて明石へ書かかり

書キかかる式部へ団子和尚出し

一帖は月て書ても雲かくれ

桂男の名所から式部書き

名月にはじめ十夜にかき終り

紫に湖水で藤の色をあげ

紫の硯へうつる秋の月

藤色の紫になる秋の月

筆先で若紫を染上げる

むらさきの石のすずりで書きのこし

我内のやうに式部は明けはだけ

あだつきを六十冊に書たてる

京染にしては五の巻色のよさ

京染も六十帖は美しく

紫で六十帖をつづるなり

六十は明月百は時雨なり

名高い揚巻五丁と五十帖

寺入をして手習の巻をかき

手習をかき終るころ三井の八つ

三井の入相に花散里を書キ

蛍の巻は近所からおもひつき

晴嵐をなかめ野分を書かかり

後の月見には野分の巻を書き

夜書た物語ゆへ夢てとめ

うたた寝に胡蝶の巻を夢の笘

寺たけへ式部書もの二把ならへ

錠口へ源氏四五帖顔を出し

ひえおろし源氏四五帖ふきちらし

浮舟の巻へ波うつ比叡颪

浮橋は五十余帖の行留り

ひる顔の花は式部の筆にもれ

和らかなテニハでいしを袋にし

(かと)の外よせなさるなと式部いひ

しらなみのうわさ式部が来るとやめ

光君何に掛ても器用也

光る君軒端で蝉を捕はぐり

又文かそこれへおけとひかる君

鼻を見ぬうち光君度々通ひ

裾重ねせぬがとりえの唐衣

老込んだ女三火鉢の猫抱き

またたびを着物に気どる女三附け

はすはとは女三の宮のわたりなり

源氏に勝れてやさしきは門院

狭衣もまくらも官女よくしたて

ごえつぐんだんを清少納言よみ

筆まめは名迄清少納言なり

清女も少しあくたいの冬の月

くくり目のイイはまくらの草紙也

枕草子目の覚た筆意なり

夜泣を枕草子に誉て書き

外題では清少納言謡婦也

とけにくいやうにかけたる雪のなぞ

香爐峯雪よりさきに謎がとけ

其さそく末世に薫る香の爐峯

雪のなぞ解けて御簾を捲き上げる

みすを巻く即智百官舌をまき

餘の官女ただ口明いて舌を巻き

雪も吃散る御簾を捲く手を清さ

簾をかかげてきよらかな雪見也

香爐峯帝も舌をまき給ふ

衣配り又袖濡らす親式部

おぢさまといふなと小式部

文も見すうたかひはるる名歌也

小式部にいくのの道はちとはやし

当意即妙見ぬ文を娘よみ

手伝のないは生野の道で知れ

小式部は地理を巧者に口ごたへ

ちつぽけな口で大きな山をよみ

鬼のすむ山をやさしく一首よみ

大江山後のたよりに母は聞き

歌によむときはやさしい大江山

街宵の昼まで只の侍従なり

仇名のほまれ蔵人に侍従なり

艶蔵人も即席で落をとり

沓を冠に蔵人は口ごたへ

蔵人は我物顔にしてかへし

 

八月朔日より築土明神八百五十年忌 平親王将門御玉首也といへる札を立つ

 

十一月草雙紙等に時勢の雑説など著述せし物売買停止并板改めの件につき取締の法令を発せらる

 

加藤暁䑓二條殿より花の本宗匠の免許を受く

 

小林一茶 其日庵素丸の門に入り初名菊明と改めて二六庵竹阿を継ぐ

 

不忍池畔に新地出来料理茶屋楊弓場講釈場など豆蔵までも出て繁昌なりしが幾くならずして取払となれり 此新地出来しにより池中の魚類多く死けるよし宮様の御聞に達し御心に不叶して取払はれしとなり

豆蔵へぜんが出ますとよびに来る

譬諭品の声豆蔵の中でする

まめ蔵のあうぐ扇に人が散り

たたかれる方が豆蔵上手也

 

深川永代寺にて京都大仏の内弁天開帳この間境内に壬生狂言の興行あり世に両国においても興行し幇間輩も酒宴の興に之を学ぶ遂に市中大に流行す

壬生狂言の見倒も百に入れ

壬生踊九十九は只見せず

てんでんに桶取まねる壬生がへり

壬生寺へ籠るは啞のかんちがひ

壬生の地蔵は啞だと知ったなり

空也寺の畑へうたん植えつける

空也寺の弟子はみそすり奴なり

空也寺の所化けんくわには此野郎

空也寺は茶釜の屑で蚊をいぶし

茶釜売喰ふやくはずの細元手

野郎か坊主か分らぬは茶釜うり

 

けころと呼べる売女此一二年前に絶えたりと云ふ

 

瀬戸物焼継始る 塵塚談に曰く、陶器焼継の事、寛政二戌年迄は江戸に焼継といふ事はしらざりしなり京都には其頃焼継有けるよし近頃は江戸に焼継を産業とするもの しく出来しなりこの故に瀬戸物屋商ひ薄く成しといふ程なり

焼継や南無三寶のめぐみなり

焼継や夫婦喧嘩の門にたち

焼継や人の麁そうで世を渡り

怪我で世を渡るは外科と焼継屋

焼つぎをよんでくんなと井戸で啼き

番町の古井戸で呼ぶやきつぎ屋

 此二句は番町皿屋敷ことと掛けたる句作なり

そん金の世間へ知れるせと物屋

瀬戸物屋あたり近所へそんが知れ

瀬戸物屋ぶく〱としてあらためる

ぶく〱として改める瀬戸物屋

ざつとした瀬戸物夜の市にうれ

 

本年秋曲亭馬琴年二十四始て山東京傳の門に入る絵双紙二巻を編て刊行す

 

此頃樹下石上通称梶原五郎兵衛市中山人と号し山形藩士にて江戸に住せり 鳥山石燕風の画を能くす 富貴安栄の作意に基く多数の戯作あり

 

此頃洒落本益々流行す 半紙二ツ切一冊の丁数凡二十枚巻首に略画あり唐本褾紙と唱へて土器色なる切付にて製本甚だ麁なり其の価は中本形二匁五分許貸本屋の見料は二十四文なりしと云ふ

かし本屋だいばかりのがくしや也

かし本屋無筆な人につき合はず

かし本屋おとし咄をして戻り

かし本屋将棋さす内ただよまれ

かし本屋何を見せたかどうづかれ

かし本屋是れはおよしと下へ入れ

かし本屋無筆にかすも持て居る

はなしやれと四五冊かくす貸本屋

筆まめな得意にこまるかし本屋

かし本の加筆いたつてのそ筆

かし本にくはんだ娘入あげる

むりやりに冊数にする貸本屋

 

元祖柳翁時代に於ける川柳の好題材として咏まれたる親、父、母(お袋)、息子、姑、舅、嫁、聟、夫婦、亭主、女房(内儀)、継母、継子、後妻(後添)、婚礼、結納、里帰り、持参金、痘痕(醜婦)及後家に関する元祖翁選評の柳句を茲に収録す

親父

親ゆえにまよふては出ぬ物狂ひ

迷ひ子の親はしやかれて禮を云ひ

寝て居ても団扇のうごく親心

おやたちは井戸と首とでむこを取

おやをいふ一字と無筆の親はいひ

おやは子の為にあくして溜めるなり

親たちはおこもにやるといひ当てる

来る程なやつおやたちに用は無し

いけにえのおやは手あしでなげく也

いろ〱なけだものの来る親の留守

おやたちの耳へはつねのせきばらひ

おでなんしとじやんなる親に逢ひ

あれを出るなと両方のおやがいひ

おやたちを内百番でたます也

初のどら両親ともにひしかくし

孝行としらずに親を大事がり

子を持てやツぱり親の恩になり

縁づくと親の咄しで顔がしれ

茶の苦せない親仁は喧嘩の苦

御親父へ其めりやすがきかせたい

いせ講へ其後こりておやぢが出

てて親がひろへば文もしづか也

おやぢまだ西より北へ行く気也

ちとしめてくりやうと親仁ねづに居る

引出しにうせたとおやぢつきまとひ

おさまらぬものだとおやぢ雪をかき

おやぢのはむすこが買た妹なり

ばちを手にとるときか奴とおやぢいひ

楽天は麦めしおやぢだと思ひ

ぶきびなるものはおやぢのそら寝入

おてうがんやいとおやぢは呼びに来る

人は人なぜ帰らぬとおやぢいひ

まだ床がさめぬとおやぢおつかける

ろくじんと覚えたおやぢ持って居る

おぢいが目みろと小刀やつと取り

夜具ふとんいつか親父の耳へ入り

親の気になれとは無理なしかりやう

すれば碁じや無いと親父もふ悟り

詫言へおやぢきせるを出してみせ

おかしなさると怨みだとおやぢいひ

てておやが抱いて玄関にむごいこと

花をみてそしてとおやぢむづかしさ

口ぼこにかからしやるなと親父いひ

片言をいひ〱おやぢしかる也

てんとうさまがゆるさぬとおやぢいひ

二つ三つ帯ひろとけで親父ぶち

ぞうきんの白いをおやぢはいて居る

少もふさてありえるおやぢなり

ざまがわるいとはぶたへをおやぢはぎ

ほごすのは親父の代にあんだこも

月花はおやぢ小言の定座也

そこでおやぢがはらを立後の月

今川でろんごをおやぢしかつてる

遣ふはずのおやぢさかツて入れたもの

いせものがたりもつたいないと親父

月のおツぱにかんどうをおやぢつけ

吸口をみがいてもてと親父いひ

羽二重をべんべらものとおやぢいひ

ちう三をびんぼう神とおやぢいひ

二度目には月も親仁もすごく成り

まんぞくに産むと親子でをどるなり

何といふ気だかさいけんおやぢ見る

なま中におやぢむす子をぼうにふり

風切りをきらぬがおやのふねん也

親父も吉原宿には度々泊り

おやぢのつらが十ツ有つて六づかしい

親ぢの耳へもれ出る月の事

おもしろくないと親父はきげんなり

そこら中たて切親父土用ぼし

乳は子の為にかくして金をため

買てみもせずに親父悪所よばり

又はだかそこで親父が腹をたつ

古椀を買にへほくれたおやち来ル

むかしに成たと花見のおやち同士

先妻の子をはおやちか抱て寝る

釜よりはおやぢ良夜に目をぬかれ

かかせてはむす子そろばんおやぢなり

父は子の為にかくしてひるまかひ

四所斗りじや利くまいと親父云イ

雪の朝親父火箸をしゆにかまへ

こわい事親父ふだんの顔で居る

夜鷹同前とは親父情なし

親ぢいに因果地蔵の前であひ

娘と窓を親父見てこりはてる

親父のあくたい死人迄買おる

ふんばりと親父は口に毒をもち

平仄をあこせ親父をだます也

魚を釣るとはうそ八百の親仁

そのごぜえすをやめおれと親父いい

親父どな佛性さとばばあいひ

父は柳母はさくらだとおもひ

安遊ひ父母はただ病ひをうれふ

今川は父百にんしゆ母おしへ

やれ遠い嬉しやといふ内の爺

孝行のしたい時分におやはなし

死金がたまると親父死にこじれ

おれが死んでも吊ひにやるかみろ

おれが目をねむつたらばと名句也

冷水を呑ンで息子にしかられる

わがどらをさきへはなしていけん也

どらに逢ひたいが末期の朝なり

いまわの時に孫のある嫁をとり

はをみかいたのがおやちのおちご也

へ壱ツになるせつ法をおやちとき

つぢつまの合ぬはなしをおやじきき

父母います内は中々やむ気なし

父をしへざれどぐならず遣ふなり

大三十日おやの代にはしよつてたち

先妻の子をはおやちか抱て寝る

親父さかんに金蔵へ灯をとほし

表徳を親父知らぬでもつたもの

御しんぷの見る細見は鑓が有り

 

母(お袋)

母おやはもつたいないがだましよい

母親の或はおどし手をあはせ

母親の訴訟で鼠尾をもらい

母親は居つつけ迄もかさとかけ

母親は百度参りのたち番し

母おやもともにやつれる物思ひ

母おやのいけんおがむは云ひおさめ

母おやに顔をあてがふくろうなし

母おやを湯ばん門からまねぐ也

母おやは羽二重だとて加賀を着せ

母おやはひいきの役者知って居る

母おやをつえの下からだます也

母親のわけもいはずむこにすね

母おやはむす子のうそをたしてやり

母親は舞をまはせる雲のあさ

母おやの目にはあさ湯と見える也

母おやもたこで二タ足三あしかけ

母親の鉄槌糖をくらハせる

母親似の外いかり飯どめ

母の気に入る友だちは小紋を着

母の名は親仁のうでにしなびて居

母のじひぢんがいよりもかろんずる

母なんにしようとてこ金壱歩もち

母は子の為にかくして一つぬき

母の文まづい顔してよんで居る

母の乳をなぐさみにのむくわほうもの

母よそのむす子をほめてつつこまれ

母がつかないと貰ひ人だらけ也

母の留守どじやうを買ってしらん顔

母じまんやれそツからもこツからも

母いけんよやよ〱をぬけにいひ

母一ト人古いやく者のひいきする

母の留守けんどんなどて人あつめ

母の相づちであまくらものに成り

母くろうびらしやら斗り二三人

母をせびつて行くうちは人がよし

母門で大腹立てござるぞよ

母嫁へもの日にゆだんさつしやるな

母のえくぼをつツいてちちをのみ

母のるす通るものごとそ引こみ

母に手をひかれてむごい鉄奨の礼

母の跡追ツてはしごを二三段

母ひとり船のまわりでひろつてる

母異見最う云ません〱

母秋は草木にも心が置れ

母に上ケよふとまんちうくわぬなり

母の金じあんづくてはもふかさず

母の供番頭のするむづかしさ

母をはぎしまひそろ〱妹なり

母をだまさせては神ンの如く也

母をあやなすこと神のごとくなり

ぬい紋をさぐらせて見るごぜの母

此の風に又出やるかととろい母

さりながらぶつにはましと甘い母

子にやるまりをついてみる若い母

格子からそりやなげるよとあまい母

おのしもしたれはせぬかとぎ女が母

おてんばの方ウがよしさとこりた母

三分が三分て買へぬとすいな母

きもかつぶれて芋がくいたひと母

弟のは銀ではないとこわい母

宿通ひやめべイならと村の母

たべものに気をつけやれと聟の母

にしが出ちや赤がむごいと村の母

ぬり桶を引つさげて来るきつい母

見世迄も顔出して行く里の母

出されたを出て来たにする里の母

化けて来てたまるものかと里の母

またよかとくらうに思ふ里の母

是れ斗着て来やるのと里の母

法時からはじめてとまる里の母

首がないぞよとひそ〱里の母

何ン時にねる迄をきく里の母

さあそこをかんにんしてと里の母

おこらうぜいかへせえよと里の母

図ぬけの祖師をかつがせて里の母

随分あい〱しくと里の母

かかつてていびるそうさと里の母

十軒で乳母か見付る里の母

里の母今頃はもふ寝たかなり

里の母かげ弁慶を遣ふなり

里の母髪を切るなとそつといひ

里の母寝ものがたりにいへといふ

里の母遣ひ残りを置いて行き

猫をなでるるを里の母見てかへり

来るたびに茶をほうじてく里の母

ざいふりをにらんで置くと母はいひ

死にやば死にや杯とこは〱母はいひ

おぬしゆへ見世も懦弱と母はいひ

扨よし原を見ましたと母はいひ

当分はかしま参りと母はいひ

ため切てござるぞよやと母はいひ

よんでやらずはとすけんの母はいひ

ふい〱と出るのを伯父は母はいひ

それよしかへをやめやれと母はいひ

つき合ひを御ぞんじないと母にいひ

今晩は行かぬはそんと母にいひ

けふこは本の紅葉と母へいひ

衣類迄まめで居るかと母の文

居続けへなまにんじゃくな母の文

すみツこでちよツこり出来る母の文

一つからをたてやれと母の文

遊里のとらわれとなり母へ文

やらないと又あだけると母はいひ

いつをいつ迄と圍ひの母はいふ

また妻が久しいものと母いはれ

松の内ちよつと来やれと母の聲

ふり袖のもげそうな場へ母の声

やぶ入を夜ぶかにおこす母のこえ

団十郎で出ましたと母苦労

くろうと好のする息子母こまり

鼠をよく取るむすめに母こまり

しかつてはみたか腹には母こまり

嘘ならばいつて見なよに母こまり

隣迄連て来たには母こまり

御ねがひは又一歩かと母しかり

おれ迄相伴させやると母しかり

爰の御所化様かと度紋の母どなり

女郎かいのしをくりに母はこまり

女郎買だといわぬから母あんじ

二階からおやわんみせて母をよび

かんりやくを大気の中に母はたち

あいそうに持佛をみせる母のきやく

やぶれたるおんぼろを着て母ハ逢ひ

どらが居たならとまくりを母のませ

岡ざきをひけばそばから母かたり

とつさんのなまえひやいと母へにげ

さんせんは父植木のは母がやり

どうやらこうやらどらものに母はする

鶯をかわいそうにと母えがい

方々へ無沙汰だらけて母に成り

つうづき合をやめやれと母いけん

四季折々のたわむれに母こまり

かみをつくねてはなのさき母あらひ

此首をくくると母こわいけん

うんじやうをしたふりをして母にみせ

ぬかぶくろ二ばんだしにて母あらひ

四つ手からなんまみだアと母は出る

弁天さまだころすなと母はとめ

御ほうびに梅がついたと母に見せ

蛤はすふばかりだと母をしえ

ろうへ貌出して持参を母すすめ

よし原のつぶれた夢を母は見る

よ火をすへやれとおんべい母がつき

ほとぼりをさまして行けと母おしへ

目のからむ時分にこじて母のうへ

もんとつさいしんの玉むし母もち

はきものを持てころびの母むかひ

ざツくりとつかんだ所を母おさへ

せげんさまたのみますると母おくり

やれかなしい事だわと母はだき

遣り手でもしやうと田町の母すね

せチの山もこさずにと母なげき

めい日も十九日さと母なげき

つれはみんな年寄だと母ゆだん

くせに成てはと宿下り母起し

これが御顔の見納に母は喰ひ

気のどくな事疵物を母自慢

戸板から女郎が出たで母あきれ

駒下駄と草履をしまひ母上り

黒いぼた餅を獄屋へ母は出し

紅葉は彼と承知して母は出し

だけれども付合ならと母なだめ

あばれたへ指さしながら母末親

どけへいく物か丁へと母にいひ

ちよつ〱と金の置所母は替へ

どらが文御持佛の燈で母はよみ

大女に成りましたと母自慢

伯父御の恩をおもやれと母すすめ

かへさざあ公儀にしなと母にかり

よがれ目の見へない猫を母たづね

死んでくりやるなとほまちを母は出し

寺へ来て鈴を鳴らして母は泣

あたたかまんちう二度とは母くわず

わるじへをかいにぬかげの母は来る

二三度はしかつて里の母返し

ははおやを生れもつかぬつうにする

ろうがいの母はむす子をそそのかし

ろうがいの母は近所のどらをほめ

労痎に母はおどけてしかられる

国の母生れた文を抱あるき

恋やみへ母の細工は猫じゃらし

どうるいが有ると母おやこすられる

唐紙へ母の異見をたてつける

嬉しい日母はたすきでかしこまり

腰縄の気で母おやは苧をあづけ

藪入の内母おやは盆で喰ひ

追出されましたと母へそつと云ひ

病上り母を遣ふがくせに成り

能いむすめ母もほれての数に入り

藪入に母はおめしの水を引き

四百づつ折々母はたばかられ

高枕母もむかしは覚えあり

綿の弟子帰ると母につつまれる

藪入が帰ると母は馬鹿のやう

あれこれが知ったに母は気もつかず

つけのぼせ母はにくさとなつかしさ

かへる母むこへ一口りんきする

兩会と母はむすめのひざへより

近所には居るなと母は二両かし

死水のそばで母おや碁のいけん

みつだんに母のはいるはたけがしれ

女房ほど母のむかいはこわくなし

あざの有る子の母おやのうつくしさ

どこかぶつたび母の泣くにはかごぜ

あればかり男かと母じやけん也

どうなりとしやれと母は蔵を出る

何の気もないに母おやあぶながり

木に餅のなるので母はまやかされ

目の内へ入れて母おやちちくられ

片月見だアなと母といぢり合ひ

十夜から余程よりあと母はきき

仲人は母のうしろを度々のぞき

それともと母は朝湯をのぞくなり

ゆだんして母すこたんとやらのされ

子は先へつきものと母邪慳なり

しかられて今朝出たと母くろふがり

若旦那よばりは母の能いきげん

とまつたら御めんと母をばかにする

とこをせぬのが母おやのきついみそ

しかられた通りに母はしかる也

ええかげん見やれと母はまどをたて

元結ぎわつかんで母は乳のませ

あさツぱらいとしや母はしちを置き

爰をよく見やと母おや三針ぬひ

こなた迄ぐるだと母はしかられる

よし原さなどと母にはつよく出る

道ばたにすわつて母をねだるなり

わたの師へ母どなり込むむづかしさ

鬼が居ますと老母へちからつけ

とぼ口を母のはいてる有りがたさ

あればかり女かと母ちや〱を付け

めしびつをかくすが母の大おこり

又春といやるかと母すみをこり

のや〱だらけで母おやいけん也

拾両といわれて母はつつぱなし

よツぽどのきげん母おやばちをとり

ちつとづつ母手つだつてどらにする

おかしな顔になると母ゆだんせず

書置のいかさまに母ひよくらのり

切れふみを母がついててかかせたり

ほそ布もそめ木も母のむねあはず

月にかかるものを母おや寺へ上げ

うれい三重で母おやいとまごひ

一生の御ねがいを母はききあきる

物くさ太郎へ母きうをすえる

男がけいこに来りや母せうじ立

金時は母にはきつくぶさた也

是にしておきやれと母もまよふ也

だれぞ手を出したらと母さらまなこ

にわかごぜ母はなみだでむみやうえん

かくし引出しを明け母ぎよつとする

それなどがしれたらと母判の事

二度はふられぬと母おや着せて出る

てんがいを母に見せずに寺へやり

くろう性母もよし原通ひなり

ようだいをいふ内母は墨をすり

茶屋の母春日野頃のみそをあげ

そとへ出て母あんじてるおそざくら

ちう三を母にねだるとつがもねえ

囲はれの母ねんごろにえかうされ

すねた子のそばに母親あきれて居

だまされるたびに母おやちえが出る

口をすくしてろうがいにきらはれる

手ならい子ははをせめるとまた筆か

すまぬ事母のゆくわんは寺でする

きりやよい持参をと母おんな也

一ツ朝のいかりと母はおしなため

ひやうたんでおさへて母はしかられる

身ふりや声ハ色で母の金を取

二タ朝母はもつと寝や〱

馬鹿な事母も紋日を苦労がり

母親に斗おそれ座頭の子

放生会母は十九羽施主に付

捨扶持といわれたが母無念也

十ヲ斗目のある母で病ミ出し

間男の母これきけよ〱

気にかけて母四ツ灸といい直し

どこの野郎といへば母きこへます

ねだられて母いが栗をさほてぶち

古塚のたたりと母へ卜者いい

そんならばくちにせうと母をおどし

ほしか船母おさらばよ〱

異見を引わけて母めしを出し

こせ〱こせ〱と母親は叱り

楊枝廊薪を母かあけてやり

身をなげに今行きますとははハいふ

じミや形りやかましそふな母が付

おかしさは母も紋日を苦労がり

おかしさは母御持佛へ願をかけ

子の使垣から母が跡をいひ

親仁の歯は真ツ黒母のハ白し

弓削の母馬の内侍とおくり号

手に足をにぎつて母はともをする

二畳じきのぞひて母はしかられる

見せ口に妹を母はつれて出る

出からしの外から母をいいどめる

ちょこ〱と母かしがいへまきつける

けしからぬ事は養母が孫を産ミ

当てはめた内を母親たばかられ

風聞よろしからざるは養母也

芋洗ひ坂へ養母を別住居

子のやみに油をさしつかきたてつ

さあ先キへたちやれと娘じまんなり

妹は母よりはくに骨がおれ

ちつとづつ母てつだつてどらにする

もう一歩くんなよようと母へいひ

お袋をおどす道具は遠い国

お袋はぶきな姿に雁を書き

おふくろは只こつくりを願って居

おふくろが切て廻すでのびるげな

お袋が死んだがさいごにぎやかさ

おふくろのるすで持佛の小淋しさ

お袋は曰ツくわむす子はてつくわなり

おふくろはおがまれて出す小紋むく

お袋をこはがるむすこ少しぬけ

お袋に聞いてゆこうはたのもしい

お袋のかたなどむすこもむやつさ

お袋と身はじの事で一トげんくわ

おふくろはかぶつて行くの迄はがれ

お袋はめうりを知れとまだあまし

おふくろもおふくろかぎを釘へかけ

おふくろと大門を出るはづかしさ

おふくろになかれてこまる中の町

おふくろへさはぎ斗と一歩出し

おふくろがやかましいとはまだ初心

おふくろのぬる内えのないむすめ

御ふくろは和の引ことでいけんなり

おふくろがつツかつて置くなみのどら

お袋をくるみばかして来た紅葉

御袋は外とに寝をれと戸を明ける

お袋はいとしや土手をえつちおち

おふくろに養子やつべし味噌を付

ころび合おふくろ様のやうに見へ

爰をよく聞けとおぬくろ糸をこき

あてはめた内をお袋たばかられ

ふだん着で出たとおふくろおろかなり

口ぼとにお袋それはよくかかり

御持佛はおふくろがかり十三日

子曰おふくろをあやなしやれ

江戸に居やよとおふくろのみれん也

ぬかみそを里のおふくろ来ていじり

うけとりを取てお袋茶屋を出る

四五両ですめばおふくろ請出す気

こりましたそうとおふくろいつている

そツちへ行つていろとお袋金を出し

どうするか見ろとお袋どうもせず

上ハ借りにこりお袋が置きに行き

娘をねらつたが御袋が出来る

ねじがねと見へるお袋腰に鐘

あまひ酢て喰ふはおふくろ斗り也

明イた目て本ンのおふくろ斗れ見る

あまり一つ愛がり養子を抱て寝る

養母に恥をかかせたでやかましい

御母儀から急度たのみと諷の師

知り切つて居るとおふくろりを聞かず

 

息子

むす子まだとむらひからはいやといふ

むすこの耳は馬つらはかわづなり

むす子のは若旦那にに弐朱高し

むすこのもみぢやき直し〱

むす子行く時に小道によらぬなり

むす子の気のかたに白ねをかはせ

息子の手届く所に金はなし

むす子の琴はろうがいの下地なり

むす子初夢に七人一座なり

むす子のとうげは八月がむづかしい

むすこの年始幾たり連たがり

むす子の駕は車ひく程かかり

むすこええそうだん後家にもみぬかれ

息子の不得手地女と孔子なり

是むす子一ツぷん捨る気は無いか

その跡を大屋のむす子くらいこみ

近辺にからまつて居て母をはぎ

四五両のおこわをむす子夕べくひ

箸おくかおかぬに息子ついと出る

のりかけで呼ぶを息子はいやといふ

眞木ざつぱ程なでむす子みがくなり

しめられるむす子のそばに出入帖

有るうへをのばすがむすこ気にいらず

二歩と無いかねをむす子のにやつかい

雪かきでぶつとむす子は傘でうけ

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一ト箱をむす子十度ビに盗出し

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花のえんもみぢのかミをもむすこ好き

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中秋の十有五にて息子どら

四書五経よんで仕廻ふと息子死

傾城四五ふくで息子快気する

山田屋の息子をみろと呵るなり

麹屋のむす子お七にはねられる

傘はりのむすこと馬のつらへはり

さかいやの息子のいたひ田うえ也

いつしよけん命の地をむす子はかち地

此雪に御苦労ときに忰事

若旦那八九とつづき大仕事

若旦那ひたいに笠を張つたやう

若旦那寶さかつてはこぶなり

若旦那夜はおがんで昼しかり

きむす子と見えて朝から市へ立ち

きむす子はつれに目ききをして貰ひ

ふてるはず二つうへを伯父よこし

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呉服屋へ来て迄すねる秘蔵息子

つかふむす子に福の神追つかず

いけんきくむす子のむねに女あり

はこをくしかきぬきにむす子する

 

云ひ出して大事の娘寄つかず

能いむすめ年貢すまして旅へ立

引越の跡から娘猫を抱き

髭ぬきの鏡に娘気をへらし

どこぞではあぶなき娘ゆふべ鑓り

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昼過の娘は琴の弟子も取り

色娘をとこの顔へなんをつけ

巻ずるめたけた娘へちよいとなげ

蟻一つ娘ざかりをはだかにし

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よふかしな娘の所は袖ばかり

とび付いて娘へわたすぜんのつな

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白状をむすめはうばにしてもらひ

かんしゃくのやうに目をする色娘

かかさまがしかると娘初手はいひ

御ふくろに知れて娘はふとく成り

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戸を立てて這入れば娘きやっといひ

締つみは見世へ娘の子をかざり

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しかられた娘その夜は番がつき

根をおして聞けば娘は泣く斗

くどかれて娘は猫にものをいひ

やぼむすめ兄の友達一人切れ

一人者となりの娘うなされる

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死にたくば死になとむすめむごく出る

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ろうがいのむすめ行年十九なり

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むすめの生酔ふんどし目立也

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娘もう筆をかくしてつかふ也

油手をあらふむすめはえりをすへ

きゃつといふむすめの跡を蛙とび

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こわがつて娘半分なびくなり

あなたは御かうしやと娘はたち也

手がらさは娘出るたびつけられる

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尻を高くしてぶつかけ娘くひ

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つきぢからついて来てきくいい娘

むかし〱ただすむすめおしい事

やろうの娘わがままをいひ通し

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娘にかぶりをふらせるやつがあり

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けんびらき娘あんまりなてこけなし

手ぬぐいもむすめがもつと品になり

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馬程なむすめはわるいとしむまれ

すずんでるむすめときどきよばられる

をしい事むすめざかりを角に置き

神仏をいじるもむすめ道具也

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はやりいしやとなりの娘うつとしさ

ここをようききやとむすめをやりたがり

つめられるたんびに娘そだつなり

しやうちするそうであたりを娘見る

まりをつくむすめはひざであるくなり

しのべとはむすめづぶとくなりはなり

かきつばた盗んだ娘よめになり

弓矢の家に生れむすめそつけつ

何やつがしわざか娘かぶりふり

たのもしく見せて娘をうれといふ

むしのええむりに娘に成って出る

娘のくれた矢で御のう直したり

評議まち〱さらはれた娘なり

紋付に娘中車ののびを追ひ

あみだへ参る娘銭ほどひかり

憎らしさ娘男とどちくるひ

娘の貌見せもあたりはづれあり

暮さん〱四手で娘呼び

おはぐろを付けて娘はやぼになり

娘に惚れて大口を止めにする

昼過の娘は琴の弟子をとり

木に色がついたで娘出さぬなり

負公事の方へ娘は行きたがり

はつかしさ年の寄る事娘する

娘でも居るかとまずい夜伽也

いも見ざる前は娘もいいきやう

あてもなく煩ふ娘十八九

江戸前の娘でまたがさけている

いも神にほれられ娘値が下り

雨舎りおしい娘に傘が来る

いい子だいつて遊びなと娘出来

娘々とうたはねて又おろし

はこ入をくどきはじめは亥の日なり

むごい事娘正札付になり

娘どしかけにしてとる千早ふる

娵がしらべると娘にもひかせ

いい男井戸のむかうにいい娘

二十四さいたる染羽の矢とむすめ

桟敷の奥にいる娘なんにする

ふ男の娘の居所訴人する

かねのつくひに八ばかりの娘也

出来ぬはずすやの娘をこんにやくや

耳よりはさら〱娘気にいらず

くりばばあ娘に二俵ふませる気

桃をかたづけむすめはさくら也

しれつたさ娘か居ると母も居る

うすい書物を持て娘来る

おきやあがれ無理に娘に成って出る

金ツ喰ひ柚ざね顔の娘なり

花うりの娘にしては野暮でなし

娘の顔を見つめると立て行

琴に三味引かへむすめ快気也

思案して娘かんざし返す也

扨こそといふ所コに居るいい娘

恥ずかしく芝居を壱度娘みる

いい娘茶のみ友だち五六人

金持て出たので娘しれかねる

叶ツても云われぬ願ンをむすめかけ

羽根でさすられてばつかり娘居る

伯母さまにむすめ白状してもらい

雨性な娘袖からふつて出る

なミよりは十ケ年余の娘也

奥行は七間むすめ壱人也

むすめともいわれかかさんともいわれ

そろ〱と娘物着がおそく成り

榎を飛ひこすと娘に化ケる

大なんぎくどいた娘泣やまず

灸よりは男が娘におそなわれ

はたちを頭にならべ置くいい娘

寄合へ四八斗りの娘来る

美しひ娘手水でぶつこわし

鏡とぎの娘だと嵯峨でそしり

十二日立ツと金喰ひ娘なり

気のいい娘虻がなめ蜂がなめ

さんしよ魚野郎あたまの娘喰

先キの鉄漿にて羽を染るいい娘

爰が娘の寝る所と十三日

娘のまやもの橘をぞうろ〱

傘屋の娘む手姫と付く所

放馬座頭に娘ぶつつかり

前表は娘灸すへから習ひ

だまあつて居るから娘すへられる

おぼこ娘も祭りから気がそれる

いもを売る娘弐百が元手也

娘でもあるかと引こした近所

きんばんの娘せつ句の礼に出す

泣くむすめ側で如件なり

馬にはのつて見ろ娘いくぢなし

杉の葉へたれる娘は金に成り

顔へおっつけてなんだかむすめふき

客をうつちやつて娘の潮干狩

銭ばこを持チずいしんを娘出る

土用干むすめ一日いいきけん

せつかくとつけたに壱人り娘なり

母麦めしで娘か直に売れ

仮りに娘とあらハれて弐分しよしめ

うつかりといまた娘の気てつめり

娘で喰う中に太平楽な見世

手を取と娘からたをちちこめる

娘をうれと善兵衛や弥兵衛いひ

娘の土用干片すみからゆびをさし

両方をねだつて娘しかられる

言ン上に出るは見にくい娘メなり

出かうしへ出してむすめをほしがらせ

井戸ばたへ素わんを置キに娘出る

あみたへ参ルに娘にはくを置キ

こんな糸くんなとむすめつるひなり

とかもふけするは娘のかせぎなり

頼光をからめ娘かおこすなり

御寺内へ娘こくもの見世を出し

内々てひくから娘はやるなり

娘にかぶりをふらせるやつがあり

石に成る中に娘は金になる

きやんなはつないしやううりもする娘

なふられて娘は二枚ふり上ケる

何ニかしらちよっと喰ハせる色むすめ

ばか手代娘をあてにつとめてる

うぬぼれ娘ありやアいやこりやアいや

娘のまたへゆいのふのぜうがおり

わがままおだてはやろうの娘なり

遠くから弓矢を持って娘来る

引ぱいでおこすむすめは木ぞうなり

生娘と見へて薬師を朝にする

きむすめは片袖すててにげて行き

生娘をくどいてごうをさらすなり

きむすめはおびをほどいてさがす也

きむすめ迄をそそなかすにくい後家

木娘のううかいんにやかわかりかね

村きむす大きな聲でやだあよう

あらおもしろく木むすめをくどく成り

手に当るものできむすめぶつて逃げ

障子を立るとは木娘明ケあけ

木娘にこりて伯龍膏をかひ

木娘ハこう〱があり〱くい

きむすめのおかげで下女はせめに逢イ

木のやうなはだを娘かあり〱

此裏に何とも解せぬ娘あり

けんきやうへ娘をやつてあそんでる

ふり袖は云ひそこないの蓋に成り

恥かしさ知って女の苦のはじめ

わがすかぬ男のふみは母に見せ

はづかしい時には袖をもちにつき

あの男このをとことて古くなり

吉凶ともにふり袖を顔へあて

妹は湯文字一つて値が出来る

鬼も十八だといふろくでなし

ふり袖が立つとらうそくひらひら

御ふ勝手郷士が娘嫁して来る

くどかれてたもとのよりをもどす也

ちえの出るほどふり袖はじやまに成り

手ぬぐいもむすめがもつと品になり

出あるくな札が付いてはならぬぞよ

よしなよと娘一寸ほどゆがみ

労咳は大ふり袖の病なり

百貫の娘をよんでどらがやみ

つわもののまじわりもする娘なり

ここちれいならぬはをとこほしい也

 

姑舅

お初にと斗しうとめたてにとり

しうとめのよめには氷孫にとけ

姑の屁をひつたので気がほどけ

じゅずを切る時は姑がつけ聲し

姑のひなたぼつこは内を向き

しゆとめの屁を笑ふのも安大事

囲れの姑の無いがとり得なり

しうとめのみみにあたりし玉のこし

しうとばばどうじくねても年が無し

しうとばばおらがうつそり殿といふ

里がたでおしがる姑しやりに成り

ふぐ汁もくはざらにやとしうといひ

まだほへて居ますかと聞く姑ばば

今の目はたれを見やると姑ばば

しうとめを久しい鳴りで故人にし

しうとめに月見ひかせる気のどくさ

姑ばば後家をたてたがきついみそ

隠居所に片時も居らぬしうとばば

しうとめもおんなじやうにぬり廻し

まきこまれきつたと噺す姑ばば

返事をばでつかくしろと姑いひ

順をよく死ぬのを姑くやしがり

はなしうなぎもふといのを姑えり

若やくにいごかツしやいとしうとばば

いいしうと本のいびきをかいて寝る

しうとばばじゅずをはやめて小言也

しゅうとめの盃よめの紙でふき

こなたには孝行だよとしうといひ

しうとばば死にそうにしてよしにする

今日からしんだとしうといらぬ世話

しうとめはあみだ両だと仲人いい

姑ばばみぢつかいめで嫁をみる

嫁のからしをうばひとりしうとかき

陰の無い姑一人と仲人いひ

やさしいこわいろしうとめ上手なり

しうとめの本ぶく嫁は十九也

しうと嫁を見る事どかいのごとし

仲人はしうとをのろふやうにいひ

とんたにうわな嫁さと仲人いい

そりやねいぴいだと姑くわい気也

まどがおりないで姑女すばらしい

やがて死にますと姑女しれた事

しうとめはねこだと仲人出そこなひ

三人になるはぢきさとしうとばば

姑めを早く見たがる里の母

しろうと仲人姑メの年をきき

きたいの珍事姑婆とん死也

なでつけておかつしやいよと姑いひ

ごつくりを願ひますると姑いひ

伯母と思ふと逢ふぞと姑いひ

留守の事猫に云付姑出る

いい年で姑にくまれざかり也

うたがるた姑かくして火にくべる

しん切りは取ツてかしやれと姑いい

おらぶちちょうちやくは女ないよと姑

十九のとしに姑女が鬼を産

わしはのみますがと姑嫁へいい

さも可愛そふに姑女引合せ

姑のものて聟をもてなすてもめ

はねをつく歳かと姑初小言

かうかの内でも姑女耳を立

おらが嫁きいてくんなと姑云ヒ

姑女に聞ケはすなほな嫁はなし

むつかしい姑をおらアもつたもの

うかりける人とはげしく姑ト取り

そのうへに牡丹餅にして姑トくい

よく爪を取そと姑ト小言也

花よめに入相しうとばばあなり

あんまりないびり姑め屁をかつけ

ささもあがりますげにとしうといひ

まづさうはせまいと姑よみがへり

仲人の道理に姑かつに乗

しうとばば田舎の産を定木にし

甲州をぱくり〱としうとばば

持ッて来ぬくせに姑かき廻し

姑め大立腹は水がへり

あんじたよりはやかましひしうとなり

しうとめはあみださまだと仲人いい

女房に大かう〱としうとふれ

しうとめがしぬとさわいてしかられる

御むかひをまてハでのあるしうとなり

姑トのでむこをもてなしもめるなり

しうとばばきりやう咄をとめる也

なぜじんきよさせたとしうと嫁をにち

ぬ人の子も出来よふとしうといひ

地獄で仏にあハぬは姑なり

しりかしちべへみがいてと村しうと

憎くさうに盛りやッたのうと姑婆

手を出さッせへと物さし姑だし

あつらへたやうに姑とん死する

ふんばりのやうにみがくと姑いひ

手間取った髪を姑じろ〱見

産れても抱きやアしないと姑ばば

姑のとん死の知らせうそのやう

よめの顔めがねの外トでじろりと見

めんどうを見て下されとよめへさし

ねがはくはよめの死に水取る気也

もつと寝てござれによめは消えたがり

百八のうち五六十よめのこと

定ごうで死んだも嫁になすりつけ

嫁のるすしなびたちちを先ず預け

めうがせん出してよめ女をそしる也

嫁いじるやつはしきみも直ぎる也

しきみを値ぎるやつは嫁をもいびり

たのしみは嫁をいびると寺参り

指をなめはいをつまんでよめをねめ

ねんぶついつさんまいと嫁をいびり

物さしを嫁へなげるはうつくしさ

いびり出しにくいものをば嫁はもち

お念仏いそいで嫁によつかかり

めいを入べしにやたらにいびるなり

いびつてはむす子をひとりものにする

朝はとうからおひんなり嫁をねめ

いびりやうこそあらうのにすけべいめ

もつれ糸おへなく成ると嫁に遣り

死にかねるふとんの下に二三両

母をころすか嫁出すかとむすこせめ

芋の親嫁にはえごくあたるなり

先ンの嫁いびり殺して置てほめ

嫁をは娘のぶん迄しかりつけ

古風だがこまつた物は嫁いびり

おふきたどふぞと嫁に望む也

ころしたからふなと嫁をいびる也

猫の目によく似た顔が娵くろう

朝晩ンに鬼のねんぶつ娵はきき

桐の大木をねかして娵をせめ

石菖の根で洗ては娵をねめ

娵のあら大きく見へる目鏡也

百八をくり〱娵をにらめつけ

姪だのに貰ツて見ればにくい也

ふうふ中能ひをねめ〱ばば居る

最うひとつおなめなさいと娵へさし

娵どのやなどと化物顔でいひ

今死ねば娵がうかぶと薬取り

邪魔がられますとしきみをよりかへし

口に唱名眼は嫁をねめ

まつ虫の角トをたたいて娵をねめ

孫が出来たら喰ひさうなばばアなり

仕合せは娵だと石屋朱をつぶす

小しうとも見やう見まねにいびる也

うたいにも三人むづかしいばばア

いい嫁にさつとふ入れるかかあたち

小姑は丈夫な身かた二タ人まで

小しうとめ母が帰るとそばへ寄

腹帯をする日小舅やっと知り

しうとめと違ひ舅のいじりやう

しうとを元のおぢにするむづかしさ

ふみこたへ〱して舅死に

娵がのろい殺しますと舅やみ

をしい事さられた年に舅死に

ふきぐみを舅はにがい顔で聞く

すばらしい舅ぢぢイをかま田もち

よめの顔見い〱まきを一本引

よめの留守孫も味方におびきこみ

しゅうとめの気に入るよめは世が卑し

のきなさい付木ばツかりくべなさる

いかなればむすめとむこを別にねせ

よめのうけ姑のとん死一つしれ

姑のものと相聟で娵出る気

夜る出すとこなたのせいと娵へいひ

あぢな事巻子に娵をあてがはず

苧と嫁と一口交ぜにひねつてる

手を鬼のやうにしうとめかくしげい

だに程な銀でしうとめ寺参り

臨終の舟に乗るのをうらやまれ

 

よめの部屋這入ると漆くさい也

よめのつまえんやらやつと五寸明き

よめの琴ちかしい客へ馳走にし

娵よみ気のどくそうにあざをたて

娵を見にどつひと路次へ駈けて出る

娵のしちのしらずに出すと半つぶれ

よめの噂をあさがほの垣根ごし

よめの駕ぼつとりものを二タ人つけ

嫁の事しうと身ぶりをしてはなし

娵のかみ酒てんどうしの時分出来

嫁の来た年が手ぎはな大三十日

娵の手へ生酔ばちをおつ付ける

娵の着かへるをのぞくとちちむなり

よめはらのたつまいものかあまよばり

よめが出て居ルと万さいつけあかり

娵の生酔御しゆでんをひけらかし

よめはもうくろ吉に成るはづかしさ

娵の来たばんに見世でも一らしれ

よめのほう丁梅づけの大こなり

よめのへを聞いたものは長者になる

よめン女へあらくら置いてひいて来る

嫁の髪己午の間にやつと出来

娵手がら唐のおとどを軒へ立

嫁のはしころんでしうとやかましい

娵なにをかけたかおりはすててにげ

よめさへ〱とぼたもちを七ツくひ

娵はもうらりやうの袂切れる也

娵が出て発句をみんな歌にする

娵の出す水はりのけて目をふさぎ

娵に花もたすあばたの待女郎

娵よんで直をするどらは高が知れ

娵の帯引出し一つおつぷさぎ

娵の供見世でこり〱したといふ

嫁自慢いい時しいを遣りやした

嫁倉へよこ付ケにして三分也

娵の髪けふの内には出来る也

娵の目羽をりの影にちらと見へ

娵入をわたくしにする不届キさ

娵腹がたつやら御飯たべぬ也

娵の荷を三味線箱で安くする

娵の藝土用見舞に見付られ

娵までも伊勢や徳むきのに極め

娵はもふ猫の見持を里へ遣り

娵膝をもふかくしても〱

娵抱きたがつてちよつくら乳をみせ

娵と娘でよその子をつい泣かせ

娵大声を上ケ針が出やしたよ

娵夜着を洗ツた晩はたわいなし

娵爪をえんやらやつととがらかし

娵雑巾をはら物にさはるやう

娵つめをかかつてて取るむこい事

娵のさかつきをむこちなくおさへ

よめのしり生酔思ふさまつめり

娵のおんがく天かにもくだりそう

嫁何も申シやせんと雪の朝

娵の禮敷居を越すそやかましさ

よめの禮町内中へ首が出る

娵の禮おふくろ斗しやべりぬき

娵の禮じょさいの無いがついて出る

よめの禮もやう程なる門の松

よめの禮おとすと地主ぶるといひ

娵の禮男の見るはかほばかり

娵の禮内はひつそりくわんとする

娵の礼すばらしい程来て歩行キ

よめの礼しやべりを壱人リつれて来ル

娵の礼ところ〱におとしあな

娵はらがたつたかへんじ壱ツする

娵はわんさらてどをつとわらわせる

正月もあかるく成ると娵の禮

袂はバ先へ廻してよめの礼

手のかがと向ふへ出して娵の禮

あいさつに男のびびる娵の禮

門松のすつこむ時分娵の禮

折りあしく女房の他行よめの礼

先キぶれのうざ〱と来る娵の礼

正月はきのふに成てよめの礼

田舎娵かんがへもなくびんを出し

田舎娵手ぎねを見せていやがられ

いなかよめてんつるてんをふりまわし

いなかよめこてすねあてて礼に出る

いなか娵すのこをならしいびられる

村の娵しんづしんづとうたせたり

生酔があらかたすんでよめの礼

くそずけのかんざし村の娵は買

扨いがい御供だといふよめの礼

さいの神過禮に出る村のよめ

うわばみの目くらいをさす村の娵

此村の娵で合羽ももつて居る

つぎぎせるくわえてあるく村のよめ

町内で舌を出し〱よめの供

こんどからもう御免だと娵の供

真鍮ふくりんの鞍で村の娵

のりかけでよくねれて来たざいごよめ

茶屋の嫁もも色程はのみならひ

親類を見知ると娵はもめんもの

お座切といふのがよめのくせに成り

気遣ひに成ったでよめの理が聞え

ぼたもちをいさぎよく喰ふよめの里

あなぐらへ気づよいよめは一人おり

書かぬ娵一べん通りせつながり

永い日も二つは出来ぬよめのかみ

中の能いよめはお経をよみならい

長い目でごろふじませとよめはいひ

寝せつけるよめはこたつへ腰を懸け

馬の尻たのんでよめは通りぬけ

ふんどしをはり合もなくよめに取り

枕めしよめがしゃくしの取はじめ

とうめうを娵は二テ人でけしに行き

物買に二三度わせたよめのおや

たのもしの尻へ出るのはよめの里

おさまらぬものだと見世でよめの事

地白からそろ〱よめをはぎはじめ

にげこんで娵の着かへる忙しさ

五六度ビ覗いてよめの夕すずみ

片眉毛おとすと娵は手でふさぎ

正月をよめもそろ〱かなしがり

とうしんをたれに聞いたか娵はのみ

そうばんが鳴りやすとよめ舌を出し

にげ足でよめの出て居る門涼み

白粉でばツかり持ツたよめをとり

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又頭痛よめはしみじみしやしがり

にくい事娵聲あつてかたちなし

いやそうに娵は乞食の下駄をはき

ほうづきを荷ともに娵はとりよせる

夕すずみ娵の出るのはごく暑なり

ぐつとこごんでぶつかけを嫁は喰ひ

屁をひってよめは雪隠出にくがり

はな紙へしの字を書いて娵はさし

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御釜じめ何やらよめにいただかせ

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かたみわけ娵人がらを仕廻ふ也

利上げをばまつたく娵へぎりでする

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はごの子をつきづてにして娵かくれ

笑ふたび娵手の甲を口へあて

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門松をうれしくくぐるよめ丁度

身上はたて直つたがけちなよめ

むごい事娵のけばへがわるくなり

みみたらひ紙たくさんが娵のなり

家樽をばもたせて出るが娵はいや

さかづきをまん中へよめさしてにげ

子をかして娵のせなかを一つうち

来たばんに笑つた娵をさつてやり

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そこをよくたてやと娵の手水也

鼾をばかきましたかとよめはきき

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連れて来た下女ばかり娵しかる也

りんじゅうを娵こはがつてしかられる

金といふものはと嫁をむごくする

しのびこまそつとのぞいてみれば娵

前でよくでてうしろへ嫁廻し

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庚申を娵の聞くのは目立なり

引合はす娵何とやらいひはいひ

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閏月娵きい〱がわるいなり

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生酔はよめをつめつて三日来ず

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後の月娵気にかけて爪を出し

餅の丸やくを柳へよめはつけ

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衣屋の娵をしがつてしかられる

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くたびれを娵はおいどへ出して行き

ひょんな事娵なた豆がきついどく

傘ぶくろ娵よこをむきはめる也

いツくらもあるに着ものを娵ねだり

もう一度着て留めたがる嫁の袖

じょうだんにのませて娵はくツかれ

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けちな娵きい〱としを一つとり

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つらあてにこころ尽しを娵しらべ

かんむりをももの下にも娵直し

かけこみの娵もみに出るはなし鳥

かねにかこ付け庚申を娵は聞き

広い江戸すて小ぶくろへ嫁はいり

北斗の星が娵入りにさわる也

何さあふ事もがなさと娵は取り

わらひ過して鬼灯を娵なくし

田舎道くやれと娵へ飴を出し

車留かた身をひろく娵歩行

年禮は娵の里にて角トをとり

口びるで娵かんきんを済ますなり

おしかけた娵のやき物かりられる

情なき一言娵はふだんきき

俄あめ娵をくづしに見世をかり

まついせき乗物町へ嫁まがり

ほめぬ事娵みりん酒がきらい也

湯殿の戸明るたんびに娵しゃがみ

足音の度ひに湯殿で娵しゃがみ

こそともすると居風呂で娵しゃがみ

百の口チ多くはぬけず娵がとり

是物になって袋を娵縫わず

おかしいたびに娵顔を皆かくし

ふくろを持ツて爰ラでの娵がくる

羽子のこをかさぬ子を娵たたくまね

大ごまり娵出女にとつかまり

乗り合てひそ〱娵は評をされ

大キな口で一ツ国を娵はいい

髭切で剃た跡娵薄みどり

爪斗しまつて跡を娵頼み

放れ馬娵はこし屋へかけ上り

人家をうごかして娵はあるく也

庚申あるく日聞て娵こまり

琴を直して娵を引ツはつて来る

奥で娵台所で下女大笑ひ

餅席娵はけいして遠ざける

絵草子を見い〱娵は餅をやき

琴がいやなら御手本ハに娵こまり

よくたもち申スが娵はいつそきざ

さもきたなそうに汁椀娵は持

無理所望側からねじる娵のゆび

似あったといふと羽織を娵ほうり

変な娵うい〱しくも雑煮也

残念さ質屋の嫁が着て通り

さあ事だ娵ぶつ真似を見かじられ

寝下り庄屋の嫁を安くする

わたしが顔じやないやうと娵は逃

なりつたけ尻をこきよせ娵の出端

白無垢に素顔で娵は嬉しそう

未にハ少しふけたるきざな娵

娵いつかぐし〱といふ早い事

盃を寝なしにして娵は立チ

無理所望娵始皇程難儀也

上りはなおし分て娵逃るなり

笑ふのをわらハずおあし娵包ミ

配当のゆするを娵は笑つてる

三度めの娵なた豆はきらい也

舌もまハらぬ大口に娵こまり

あたり見て娵梅の木を二度ゆすり

笑っても〱娵をかしかり

叱られる娵小姑の毬をかり

大口が来ましたと下女娵へさけ

かたびらの打かけで娵櫛けづり

泥坊の咄しに小用に娵くろう

おびんずる娵どうしたか腹を撫

野かけ道娵なんじうな事が出来

泣たはよその子だのふと娵だまし

行水をぽちゃり〱と娵遣ひ

容顔を崩して解毒娵はのみ

一ツせん二銭三せんと娵かぞへ

暮切てから二三寸娵はしより

せめてうみ落す迄娵置たがり

気をとり直し〱娵はらみ

ほめぬ事万歳を娵始終きき

他人に迄もいびられる娵の琴

鋸の刃をたてる内娵隣

紫の月代しよつて娵あるき

天社日娵おしひ事〱

きき馴て娵近頃はかんまぜず

せめられて爪ツくそ程娵ならし

けんどんや覗て娵はいいえ也

舞鶴を戸張の娵がめつけ出し

とろほうは逃たといふに娵ふるへ

眉をぬらして念仏を娵となへ

咄しにしてはうるさいと娵はいい

昆布巻を娵は帯ひろどけにする

留守かして声のありたけ娵笑ひ

ぶきよふなうりやうに娵にげるなり

あのあらをはちへ入れろを娵わらひ

だかれなと娵ひつついたちちを見せ

うま〱をたべるまねして娵はやり

碁会所に娵のうわさはかつてなし

若旦那足袋がきらいで娵がもめ

寶引きに勝ったも娵の一トくろう

ゆふべからしんかへと娵ひよんな顔

拾本のはしらによめにげじたく

五日過キ十日過キ娵ついつたけ

万さいのじよ斗り聞イてよめは入り

ちちにつる下つてよめをやすくする

又来たと紺やの娵はしやうしがり

ぐわつひしたんすのなるが娵の出は

わがままな娵右まへにあわさせる

遠きおもんはかりいも娵たべす

べつたりと娵じやのかわをぬりふさぎ

万歳か帰ると娵はのろりと出

借りた子におもしろかつて娵喰せ

からくたを干してる娵の美しさ

ほうつきを娵えるほとに〱

情そりか済マぬと娵をさかす也

あの娵が行カハと芝居はつす也

万歳の一間こなたて娵ころけ

間見へ来て身持の娵を奥へやり

おかしいと嫁ふり付たやうに立

ふきりやうは手始かてらに逢た娵

金持へ裸まいりの美しさ

よし垣に人のなつてる娵の藝

いいくらしはたかて娵があまくだり

花の留守もうかなと嫁なぶられる

なければなくて済むものを娵おしみ

ぼた餅の椀をよめん女もぎ放し

生酔も奈良草市へ嫁は行

日待月待娵琴をはたられる

口びるへさわらぬよふに娵はたべ

十三声もせがませてよめは出し

才蔵があさつからよめ気にかかり

よめの礼やねへ上カつてしかられる

むごい事あらめをよめが三日きり

いらぬ事娵だはたかとこしがぬけ

しゆろほうきかけて手拭よめはとり

本のおやならよめのへをかぶるとこ

人立チの方へあふきを娵かざし

しりをこきよせてひろもぐ娵ハしめ

田をうへる娵でい中のはちすなり

生酔に娵どこへでもあがるなり

もの申に公家をさらつて娵はにけ

うそついたよふな病を娵はやみ

かくし引出しから娵はつめを出し

喰ひならわつくへと娵こはたなり

ばあ両に娵えいやつとはらを見せ

こしをこごめておごけるとよめはにげ

位あらそいを娘と娵はたて

かつてからしかけて娵にこまらせる

あたるもの何もたべぬに娵ははき

あいちつとそこをと娵の前へすえ

たあまつて娵ほうらくをひいて居

びいとろて二はいあをつて娵はひき

じひろ〱娵のさげすむしこい事

ぶつかけを一トはしのけて娵は喰ひ

人ン間ンのもちから娵がかかるなり

たいめんにあたつざるので娵羽おり

是からそろ〱娵にげしたくなり

定紋をなしわりにして嫁は出し

秋風の口切りをよめ十日入れ

食づいて来ルと娵から也

いかに美しいとて娵まつばだか

ねれ切た娵そこまめが六ツ出来

なちつたけ娵小べんをほそくする

もう娵は二把で五文を買ひならひ

じゅず袋娵軽薄のはじめなり

花よめのあました平へ札を入れ

花よめのぶすいで無いのにくらしさ

花娵は湯へ行かれぬをやつといひ

花よめを見に出たむすめなぶられる

花よめを引きずり廻すおふま時

花娵のしやぞくつけが五六人

花娵のつひへをいとふにくらしさ

花娵はめしをかぞへるやうに喰ひ

花娵の人目にかかる暑い事

花娵のを二タかみそりでらりにする

花よめは和こうの中で茶づけなり

花よめはその頃といふ病なり

花よめのみやげは里へ生き如来

花よめの気づい三年過ぎて知れ

花よめのふざけたぶんで三ンを下げ

花娵はかんがへもなく顔をぬり

花娵をひやとかん酒のあいへ出し

花娵を見てこようかとはかま着る

花娵にそれほど弾きなさりながら

花娵は湯屋で聞たい事を聞

花娵の内儀とかはる恥かしさ

花娵の早く寝たがる出来ぬ事

花娵に六七人で所望する

花よめの供にしなのはあまりなり

花娵は佳肴の中で茶づけなり

なぶらせはぬ花よめ湯へさそひ

蝮も喰ひますと花娵しやれたもの

口をすくさせて花よめこしをかけ

ひく斗ならと花よめ三をかけ

一生のなん儀花よめはらがへり

松の内花よめ二十四そくかり

さなきだに花よめ寝ごいさかり也

ぶかけがよいと花娵いひかねる

花よめはかいくも尻はかかぬなり

糸を巻くやうに花娵もちを喰ひ

たんとつく訳は花よめ二タ人也

そろ〱と花娵悪所よばりする

りつぱなるもの花娵の丸はだか

一三とは花娵むごく見られたり

はやり風ぐらい花よめつくりたて

ねぎをはさんで花娵をおつかける

年輩なほうへ花よめさしてにげ

一大事花よめどうか屁が出そう

ほととぎす花娵ものをいひはじめ

わんをふけとは花よめの役ぶそく

ちぎれた歌を花娵はくつ付ける

ぶつかけを花娵片手ついて喰ひ

肩で打つ迄は花娵きいて居る

気がるな花娵弐度めと評が付き

くどかれるやうに花娵脉をみせ

琴のあなたへ花娵を引すえる

耻しさは名娵みけんじやくに成

だまり〱と花娵の食のよさ

おれこんで花よめほしひものを取り

れんだいて花よめおくる金谷宿ク

大それた事花娵のいらはなし

顔赤クして花娵はづつうもみ

当分はならんで喰ふの耻かしさ

こツちへ来ぬと里からさわぎ出し

其つみをゆるし呼かへす美しさ

こがねむしより美しい裸むし

言語同断乳斗持てにげ

高もりばくへぬものだと母しいる

どふてもしげさんと花娵はかなで

他人のはじまり兄よめをねらひ

方まけをしたのは娵とでっち也

見られる顔でよめたは立の侭

黒吉の顔が持参でまつ裸

花よめをすずりの水に遣ひそめ

花娵に時々化るひのへ午

みやくせいをいわれぬ先キに娵ば入

村の花娵ひやう打のくらで来る

嫁藝にかけては爪が長ひ也

馬で来るのでよめん女とはねる也

よめん女へあらくら置でひいて来る

おはぐろを付けて娘はやぼになり

どうで見せねばならぬはをかくす也

じだんだをふんでは見たが貰はれる

 

花聟の馳走やぶるお法度

花むこはよほどの頭痛おして起き

花聟のなぶられるのは四十二也

恋むこの下着はみんな直しもの

恋むこが来てうす紙を引へがし

恋むこの先おつとつて三昧がよし

こひ聟を入れたで男弟子が来ず

むこのくせ妹が先へ見つけ出し

むこ行く事を茶やからそにんする

聟のどらあの娵ならばむりならず

聟に行く相続むこがちゃ〱をつけ

聟をおはへて白髭で一分かり

聟へ気の毒なさしうり見世へ来る

聟用をもみじの下でかぞへたて

むこじつは日本の地利も知て居る

聟さえも入り度きおや子げんか也

聟土手で是迄なりやさらばとて

聟斗り両国橋へ出て帰り

聟花でそふもしろとは不覚也

聟への異見女房だとおもやるな

聟の表徳を帰柳と付る也

むこの身に成ても見ろと伯父いけん

むこの白状はよぎなくまいつたり

入聟が抱かふといふとべそをかき

入りむこは是でおわかれ申します

入聟の無念せい人よばりされ

入むこの諷四五人弟子がつき

入むこをあはれと思へ山ざくら

入りむこのつらさ花ならはふつ切り

入りむこは下女と一所におん出され

入むこがやくわんをぬぐとむづかしい

入むこは花の外には内ばかり

入むこのいび里ぬかれる旅やつれ

入聟のじんきよはあまり律儀過

入聟はやつきとしたがつれになり

入聟の口はないかと月見過

しめて居るのが入むこへ耻かしい

さり状を書くと入聟御出され

衣さへ行くに入むこむごい事

見くびつた通り入聟しかたなし

おてうぎにのつて入むこおん出され

目に見えぬ物入聟がふ如意也

とうどすはつて入聟を遣カふ也

吉原さなどと入聟謡講

ふられるとみじんハ入聟の花見

金つかふすべも入むこ知っている

れい〱と追人の中にむこの貌

仕合せな聟しやうかんでばつたばた

化けそふな花むこの出るするが町

女郎でも買ひなとむこをばかにする

女でこそあれと聟はつツこまれ

みそをする為すりこ木をむこはかい

花を見すてるとうたひてむこ帰り

どつとわらはれ渡し場でむこわかれ

いくらともなくむこの出るこはい事

目の二ツあるむこが来て無心なり

よふさんじますまいと聟りちぎ也

孫も六人もと祝ふむこひきで

両がんのあきらかなむこ二タ人とり

もみじがりむこやるまいそ〱

およしをかたづけお亀に聟をとり

男めかけの気で居なとむこにいひ

蔵にでも入れられてはと聟帰り

つき合ひをよくする聟はおん出され

花の留守聟つつしんで相つとめ

おれは〱と斗りむこ花の山

しんぼうのよいむこやくわんかふつてる

せめて向いの嶋迄と聟あはれ

ききますまいぞへと笑ふ聟の灸

下駄屋の前迄来てから聟はづし

能ク血をは納メさしやいと聟にいひ

二人でもままよと聟と伊勢や行

いたづらにむこさそつてよわらせる

誘はれた返事に聟然る所

孫六はむこ引手にはよいかたな

ふしきや今まで有リつる聟見へず

後の聟むじんのからもたんだへる

後の聟来ると間もなく産の世話

しんこんにてつして聟は出る気也

姉むことよりやは母の手ぬけなり

姉聟はものにかまわぬ男也

姉聟まてをいためて縁に付け

ほうそうのいつち重いに聟をとり

とつぷりと暮てと聟の方でいひ

うつほほをしたさ妹にむこをとり

ししが見えねイ〱にむこを取り

いなかむこ袴でしばりからげられ

妹とむこかんどうわびるなり

おかしさは聟去り状をはたられる

はにかミが無イで添聟わかる也

柳から気力なふして聟帰り

内の雪隠へ隅田から聟帰り

日本の上り口から聟はづし

鯉のあつものをくらつてむこ別れ

角田川向ふの人は聟斗

せめて向ひの地迄ハと聟渡り

車坂むこを引すりおろす也

買たらばどふすると聟胴をすへ

つよひむこいつ迄も手ではいをおひ

四五日もいぶされやれとむこすすめ

のどへたつよふな女郎をむこはかい

又さしでなさるとむこはしかられる

やぼなやつむこをさそつてしかられる

百の銭聟使ひみちいひたてる

ばかな事二人リへむこを取たよふ

ふつまりさとう〱母の聟に成

義理の有ル母と別段に孝行

ふんどしもいらぬとむりに貰はれる

姑トのでむこをもてなしもめるなり

 

夫婦

夫婦づれ女房に先へ出やといふ

夫婦して女郎を買ってはかが行

夫婦のとり組み晴天七日なり

夫婦しめやかに月代ぬすんでる

夫婦旅昼は道づれ夜はなさけ

夫婦のかため百両をもつてくる

夫婦してきれいな所をはいて居る

夫婦してくんすほぐれの雪の中

子が出来て川の字形りに寝夫婦

子の祝ひ夫婦げんくわの一つ也

ぶん〱に寝るが夫婦のすがれ也

ぶんさんの済む内夫婦木綿もの

子の寝びえよく日夫婦けんくわ也

おかしさは夫婦喧嘩をちんがほえ

わる口がいやさに夫婦べつに出る

よし原へ夫婦して行くつぶれまへ

似たもの夫婦居続ケの留守のざま

男の子出来て夫婦の紋が知れ

そこかいてとはいやらしい夫婦中カ

二三丁出てから夫婦つれになり

どの嘘がほんの夫婦にならうやら

かうなれば始めのうそがはづかしい

五分〱に徳もちをやく中の能さ

むつまし過て看病もさせられず

をつかぶせられたと見へてつり合ず

たたみをたたき立てどこの目ぐろだよ

中かおりすると女のこえになり

中直り猫を壱疋苞にする

こんどから行きなさんなと中直り

夫婦げんくわにばれを云馬鹿亭主

くたびれた夫婦のそばに四ツ目結ヒ

仲人の夫婦わらひが上手なり

おし鳥は夫婦げんかの弛へ来ず

にくい事四五丁行と夫婦なり

 

亭主

ていしゅをばいひこめ内儀市へたち

亭主が有つてのろうがいさじをなげ

亭主がどろぼうするでどこへも出ず

亭主をいやかるのを知りくどく也

亭主下戸ぬるかったりあつかったり

ていしゆのにこりを取てる旅の留守

御てい主の留守で鰹を手負にし

御亭主が留守で南瓜の値が出来る

御ていしゅのやわらかなのに作りたて

御ていしゅの琴をかせとはおくの也

御亭主が死んで逃げるがやめに成り

御亭主はぐわんをはたいて五百たし

御亭主がどれだか知れぬへんな内

ていしゅの足をつめつたで行にくい

て主が死んでにぎやかな内に成

亭主を大事かると間男かふれ

御亭主はじんきょ看病はらんでる

御亭主の背中をあやし〱行

御てさんは又江戸へかと腰を懸け

ひよ〱の内は亭主にねだりよい

産籠の内でていしゅをはばに呼び

ほうばいが亭主見るとて寄たがり

そこら中明け〱亭主ぶり

見世さきへ出ては亭主を憎がらせ

寝せ付けて亭主とかわる松の内

馬道具屋亭主と見へてかわに座し

はあまかと隣のていしゅ聞にくる

跡をおす亭主やごしのしまい也

もう白髪迄はうさんなていしゅ也

気のよわい亭主理づめでこしをだき

ふしみせの亭主はさいを聞きに来る

つかみ込みましたと亭主花のみそ

ぬり桶のねぎへ亭主はくんで出し

どうしても泊つて来たが亭主まけ

御茶とうはしたかと亭主聞いておき

ねかす子をあやして亭主しかられる

茶の会にかげのうすいがてい主也

店中知らぬはていしゅ一ト人なり

にくいほど亭主の義理をいひ過る

やく亭主だん〱懇意うすく成り

紋付をていしゅがとってしづか也

おんだされましたと亭主だいて来る

ぬき足でかへる亭主はじやすい也

門禮で済まぬと亭主そ引き上げ

いそかしい見世につき袖亭主なり

火吹竹ぐるみてい主をだいて出る

どぶさつておろりと亭主たきつける

女客てい主ちそうに他出する

たま〱はよいと亭主はふとく出る

女きゃく亭主出ばつて呵られる

無筆でもていしゅの文にかげがさし

うたがいははれたとていしゅりちぎ者

此頃はつくるに亭主気がつかず

女きゃくてい主あいそに二タ人だき

大碑の江戸とはていしゅむしが知り

帳前にゆびをなめ〱亭主居る

こしやうの儀有つて亭主が臼をひき

いけんだて置いてくれろと亭主いひ

みさををばていしゅのたてる気の毒さ

出立のころからの儀とていしゅいひ

恐入りましたと亭主ひよぐらかし

塵を入れやれと亭主がさいはじけ

くらはせてかつて置くはと亭主いひ

名代のていしゅ茶見世に太義そう

女中よみてい主ひに見てかつぎ出し

いつだに帰る気ならとばか亭主

わりひざに成ると亭主は立帰り

めしびつをまたいで亭主しかられる

扨はおれゆえけがすかと亭主いひ

わつ〱とどなつて亭主はぢをかき

あごへひつぱさんで亭主たたむなり

けんとうを聞てぬかみそ亭主出し

だましてもいけんとていしゅ外でいひ

少々はふるも可なりとていしゅ出る

占つて貰ひにあははていしゅ来る

御しらすでばれをいひ出すばか亭主

どこへでもくつついて出るばか亭主

ばつた〱ていしゅのかわる美しさ

女房は六郷亭主伊賀をこへ

ばかていしゅ湯で聞きかじり大おこり

硯ぶたはしからとるはていしゅなり

女きゃくていしゅにこづきしかられる

かつがれたていしゅ三十ばかりうへ

ふられたとていしゅせつない申わけ

みそづけで亭主湯づけをおしやうばん

先のていしゅに御無用とうんのつき

吉原へ行くとていしゅやつてのけ

からのかがみとはたれだと亭主きき

見ともなさ亭主かきのけまかり出る

にげようとぞんじましたとばか亭主

あの亭主になるやつはといらぬ世話

にくいやつ亭主の事をきやつといひ

立てひざで打つがかじやのていしゅなり

疑ひははれたと亭主大だわけ

それならばそうよとていしゅ巻かれてる

すは大事ていしゅ鼻毛をぬいて居る

こツちらを亭主が向ひてやかましい

おきて見つ寝て見つていしゅ花の留守

なり花にあきむだ花を亭主かひ

あやまつてやろうと亭主まだまけず

大江山出見世の亭主ふりよのけが

外とへ出るふりで亭主は椽の下

またもとのさやへ納めるばかてい主

くすぐツたがらぬ子を持ばかてい主

しんだ亭主へきれる気で茶せんがみ

大キいは亭主へゆづるどぢや汁

だもしれぬ亭主の出るを見ると来る

間男へ馳走に亭主叱られる

叱りなさるなと亭主に波子五を見せ

出あてると亭主ハ誉て花の留守

大さわき五兵衛亭主を切て逃ケ

腹筋なはなし亭主か追出され

日帰りにねりまの里へ亭主やり

暑気見廻目を赤くして亭主逢

おはぐろを亭主のすてる去ツた跡

四ツ目屋の亭主薬を遣ひこみ

とんだ御亭主と子の膳先キへすへ

から皮を半いさかいで亭主買ひ

去状へ文をいつけて亭主出し

諏訪の箸半いさかいで亭主かり

以後は見のがしにせぬぞと馬鹿亭主

遠くのていしゅよりはちかくのたにん

十九日ていしゅぶち木かつて来る

亥の日からていしゅ気に成ルのが出来

大三十日亭主二かいで琴をひき

かかりける所へていしゅもどりけり

間男を切レろとていしゅほれて居る

わはつたかおこうとてい主すねる也

町内でしらぬは亭主斗り也

御褒美の出ぬ孝行を亭主する

人智恵で亭主は野暮な腹を立て

旦那をば出しなと洒落る女きゃく

糸巻の向ふに亭主をどツて居

壱年もかせいでくれとていしゅいい

もち花をさげてていしゅに引きつられ

乳のみ子を相手にていしゅすめぬ顔

 

女房(内儀)

女房が有るで魔をさす肥立ぎわ

女房は蚊帳を限りの殺生し

女房は酔はせた人をにぢに行

女房を雪にうづめて炭をうり

女房と相談をして義理をかき

女房はなんぞの時を待って居る

女房にせがまれて売る石燈籠

女房のかたうでになる茶をはうし

女房は先荷がつくと明けたがり

女房の留守も中々おつなもの

女房は廣袖をきてうけに行き

女房にひげをぬき〱しかられる

女房が死ぬと夫はふみを遣り

女房はねつからぞくな事をいひ

女房を呵る時にはさらへおけ

女房はとちらであつてさへぬもの

女房を持て朝寝にきづがつき

女房はそばから医者へいツける

女房をこわがるやつは金が出来

女房は客へ添乳のもうしわけ

女房はそれ見なさいと外科を呼び

女房の留守押入れへおツつくね

女房持山を見い〱鹿を追ひ

女房を大切にする見ぐるしさ

女房のいけん一歩がまきをつみ

女房にとちゅうであって先ずしかり

女房へ乳だ〱と押ツつける

女房は何さ〱と三つへし

女房はせうじの内で値をこたへ

女房に髪をゆはせる気のよわり

女房の顔見てごほり〱せき

女房のとツつくしまは値が高し

女房迄見へぼうをいふそのにくさ

女房に何もさせぬたわけもの

女房の聞くようによむにせ手紙

女房のひが目にあらぬさくら也

女房はおふくろよりも邪魔なもの

女房だと思ふがむこのふかく也

女房のものをかりるとたてこづき

女房と相続をして妻を去り

女房の言傳いはぬわかざかり

女房は風月の友をわるくいひ

女房が留守だとはめをはづすなり

女房のたびはていしゅをはなれ山

女房の縁で御油なども上げ

女房にへつらい過ぎてけとられる

女房を籠づめにして番をつけ

女房が留守でながしがわんだらけ

女房はやかぬがたてでいぶすなり

女房はすつぽん女郎お月さま

女房のくろう草木黄ばみ落ち

女房うるさくながしてはなりやせん

女房が出るとはなしがやひになり

女房の留守みそずけをつかみ出し

女房の智恵には鎰をかくすなり

女房があれば行かぬとけちなやつ

女房の留守塩からでのんで居る

女房の御きげんを見てしちの事

女房の苦は花が咲き月がさし

女房の番をして居る大あばた

女房のちえは花見に子を付ける

女房の留守内中がわんだらけ

女房に一日つらでおどされる

女房をしばつて奈良茶喰つて居る

女房の諷よツぽどひどくよひ

女房がよめば手かみもつの田川

女房の先へばかアなをとこ行く

女房のりくつ吉原みじんなり

女房はみだらな中へかへるなり

女房をとつてつけてのりやじ也

女房のむなぐらをとるたわけもの

女房は籠でかへつてしかられる

女房と目黒へ行けば御きげんさ

女房をとりあげて置てりやうしする

女房にさくら〱とうたわれて

女房にゆわせてめめずほりに出る

女房を持て人そうづらになり

女房にこび付て居る大あばた

女房もちほれたといつてつつこまれ

女房へせい目で居る大あばた

女房に付きについてるたわけもの

女房いつぱいをするいつた朝

女房をよしのへすてて堀へゆき

女房をおそろしがつてただかへり

女房は三ンの(しも)にてがなるなり

女房のるす扨うらはいツかごろ

女房のそうを見い〱さそふなり

女房はもみぢを買ってくやしがり

女房はさくらであなを見付出し

女房を乗らせたがるねりくやう

女房が出るとだアれかよびあつめ

女房にほれると先が近くなり

女房のむかいに来るは一チもんじ

にょうぼうの此ごろ髭をそりならひ

女房が留守で囲ひに内を見せ

女房にひかせ鼻ツたらし語り

女房をうかがつて居てしかられる

女房とどちぐるつてるひやうたくれ

女房は外のどく立て斗させ

女房にこび付いて居るみぐるしさ

女房はきたない夜具に一人ねる

女房と中やたへなんもみち也

女房に負けるものかとたわけ者

女房も亭主もはじな病気也

女房に文をかかせる金屏風

女房を毎晩しかる蚊帳のあな

女房に成ては客を邪魔にする

女房にしたでついえな事を知り

女房はあたま斗の値をつける

女房はそれ見なさいとこもをはぎ

女房の料理午蒡こけをふき

女房を去ツて渡天の供に行

女房を大事に思ふもてぬやつ

女房はちょつ〱と取替へたいもの

女房にあきやるなよとたわけもの

女房鼻がつまるとち恵が出ず

女房のこわじいをするいやなきみ

女房ハとうけん女房丸ひたひ

女房を見なから笛をふいて居る

女房のはなし斗するたわけもの

女房をするのはしちの利上ケなり

女房にほれてつき合がなくなり

女房さへあたりかいいとねたるやつ

女房気を出すで大こく目立ツ也

女房気でくりを出歩行にハこまり

女房邪すいで芝居ではないけな

女房にもみせたい程のいい女郎

女房を持つべからずととら仲間

女房は二十八丁下に待

女房の留守耳かきにもこまり

女房に聞ケがし謀書よんでいる

女房の高慢ちつと出なさいよ

女房顔するがにくひと納所いい

女房のいんぎんねからこわくなし

女房を起コさずに置ケあくる朝

女房のかげ見にそつてたわけもの

女房の為に両国までまわり

女房を三声おこして下女へはい

女房にいま〱しくもほれられる

女房の首うり買に成てすみ

女房の目の玉そろり〱ぬき

上るたびいつかどしめて来る女房

てつくわうちそのくせ妻は戀女房

美しいはず世盛りに来た女房

はツつけよばりで出やしたと女房

是でもお傾城のお手かと女房

むだな薬をせんじてるいい女房

はらのたつすそへかけるも女房也

おふくびで見るのが馬の女房也

くわんへ取り付て泣くのは女房なり

引はづれはづれて堀の女房也

わがものにしてはついへな女房なり

二度目には三年ものの女房也

盗人はせがれ同類女房なり

駕かきにくつてかかるが女房なり

大どぶでぬき手を切た女房也

横顔で出る取次は女房也

声のやさしいが座頭の女房也

ばからしい出入り相手は女房也

木火土ごん水より先キへ女房

見かじつた女房むつくにいけぬ也

どらに成るはじめは女房あばた也

うたれたる訳は女房がかたやなり

しちやより女房はひどくはたる也

花ものをいはねど女房けどるなり

二日寝て女房いこんはらす也

前九年元は女房の出入なり

ながし元ひだつた女房笑ふなり

こびついて居ると女房はきげん也

他に事をよせても女房さとる也

ほれて居るだけが女房の弱み也

友だちを女房のはつらでおどす也

そツちらの羽織が女房すめぬなり

けどる事女房神のごとくなり

あらかじめさとつて女房へへん也

なぜ急にいるへと女房ぬわぬ也

おかしさはすけんの女房りん気なり

旅がえり女房三みせんかくす也

こわい顔したとて高が女房なり

中直り本の女房のこえに成

つみらしさ座頭の女房うわ気也

けいせいに女房めんだんする気也

風ふかばどころか女房あらし也

のみようがわるいと女房りくつ也

かご代はならぬと女房無法なり

やくそうで前の女房をかくすなり

麦わらのじゃすいを女房廻すなり

ごふくやも女房の有るはげびる也

女房に恥をかかせるやまひなり

ずいきの白あへを女房ねだる也

家内安全女房と月見なり

いい女房里と小ゆびをかくす也

竹笠をかぶつて女房かせぐ也

ことしの市は女房が行に成

片なしに女房女郎をけなす也

紅葉にたへず女房の小言なり

おいらも出ましょうと女房いや身也

女房がきうあくいふとだまる也

ころびうせいまだに女房やまぬなり

また板のまへに女房たたくなり

たしなみなさいと女房は折レるなり

夜具をしたてる女房のぶさまなり

壱人り居なよと女房のまつぼなり

すり子木の加役女房をたたく也

井戸はたて聞ケは女房りくつ也

明ケ方に女房辰巳にあかる也

はへぬきの女房と見へてじやる也

本店をたてに女房のりんき也

弐尺長ひで女房とみへぬ也

京の絵図女房芝居はどうだ也

春女房吉田家へ弐分やつた也

土用干所コか女房か見へぬ也

がつ〱せぬで女房もち知れる也

市のどら女房くわんおんさつたなり

組入も買て来なよと馬鹿女房

此暮の顔が見たいと女房いひ

鯲をばおまへころせと女房いひ

さあ雪だ出たくなつたと女房いひ

うあれてるつらを見たいと女房いひ

世によろしい時の事を女房いひ

羽織でももうしれやすと女房いひ

すつぽんに椀は御めんと女房いひ

三わりならばふせようと女房いひ

ぐるで入れぬと大門で女房いひ

今夜はおれでしまいなと女房いひ

文やどんもうござんなと女房いひ

悪口はわつちがかぶと女房いひ

今年もやみつきましたと女房いひ

旅送りとまるべしたと女房いい

わたしらが一チ度したらと女房いい

行キやすは能気てやすと女房いい

今夜の俳諧古句だと女房いい

医者衆火勤とおつしやると女房いい

三もんと壱分かかると女房いい

そつと堀なよたどんだと女房いい

傘斗返しなさいと女房いひ

わたしをば化した気さと女房云

けふの作者はどなただと女房いひ

内のには御かまいなしと女房いい

ぼろを見て女房ぞつとするといい

家づきの女房つけへりつけりいい

つき合も久しいものと女房いひ

何ンとなく友達去れと云ひ

いつ何時でも女房うんといひ

たつた二度いったに女房どらといひ

いふまじき口上女房連れへいひ

たつた二度着たと女房ぐちをいひ

さそひ人に女房からんだ事をいひ

かねのあぢ女房にきけばすいといふ

ちよぶ一チに行よは女房あいといふ

船頭の女房能い日にせんたくし

孝行に持つ女房は年がたけ

ひま人と書て来たのは女房の手

角力好き女房に羽織ことわられ

醫心の有りて女房事にせず

足の毛を引くが女房の中直り

かごちんをやつて女房はつんとする

障子さへはれば女房をよぶものか

蚊を焼いた跡を女房にいやからせ

料理人帰ると女房よめを聞

能くしめて寝やと女房へつとめて出

あきらめて気強い女房ごくりのみ

なぐさみに女房のいけん聞いて居る

里のない女房は井戸でこわがらせ

ひま入と書いた返事ハ女房の手

しちかへす病気女房はきへたがり

草津の湯とかく女房がふのみこみ

かた衣で女房を化かすもんと宗

いんぎんに呵女房は根からはへ

一トけんくわして女房はしちを出し

はち巻て女房へ願ふむかい酒

狐つり女房が来てもゆだんせず

わづらいの内は女房の膳でくい

行かば行きなさいと女房弱く出る

女房へ忍ぶは其日の市もどり

どつからかだして女房は帯をかひ

あの女房すんでにおれがもつところ

素一歩で女房はえちご屋へ上り

鼻の下タ長く女房の御帳つき

大三十日女房がいふとだまりをれ

宿が来てにぢるを女房それ見たか

巻ぞへにあつて女房も山帰来

もふ一歩くんなと女房舌を出し

おやぶんの女房かみたち供につれ

あづきやれと女房の金はなでこまれ

取かへに女房の来るごふく店

置き所を女房あらましいって出る

はご板をなげて女房禮をうけ

雲程に女房は月へさしさはり

恋女房桜ざめにはかかはらず

二タ人目は女房の傘をかして遣り

やつれたる女房の来る古いかけ

ひの内女房ほつても気が折れず

一生の女房とむす子吟味する

きげんをとると女房ゆだんせず

気の知れた男女房をよぶとやめ

たがわざか文が女房の手に渡り

いひぬけをみんな女房に覚えられ

干鯛箱女房はぼろを入れたがり

夜着一ツやけをおこして女房着る

一生のかきん女房を帳につき

旅がへり女房につきやかましさ

度々の留守女房ぎやくいを思立ち

初雪や出たがるやつと女房よみ

うけるから見れば六てん女房はる

小べんにおきて女房碁をしかり

紅葉からさればといふは女房もち

目があると女房にするとごぜをほめ

一トしまり女房はむごくすてられる

間男をするよと女房こわいけん

かんどうの四五軒先で妻をさり

さぼてんを買って女房にしかられる

こび付いて居るで女房にはやくあき

香のもの程にさしみを女房きり

やうだいをいひ〱女房いつ付ける

生酔の女房あたりでほめられる

針箱をさがすと女房とんで居る

そらツこと置きなと女房やりこめる

むなぐらの外に女房の手を知らず

九月蚊帳女房女房ひかりを書いてつけ

大師河原へ行つた跡女房にげ

たばこやの女房は血どめ程まける

つくだじま女房二十すしかぞへ

りべつした女房と並ぶ切おとし

あぶなツかしい女房をあばたもち

さあおしを頼むと女房ぬかだらけ

ねことばツかりものをいふふてた妻

薬ぐひ女房きせるをひつたくり

となりの女房まくらがやとりに来る

むなぐらを女房関口りうにとり

りに勝って女房あへなくくらはされ

はげた歯で女房八つ迄はなしてる

是でやぼならと女房一歩かし

めしをたきこんで花見に女房出る

おどけのやうな事女房かえつてる

沖づりは女房のるすにすすめこみ

すがかきの中を女房のうでまくり

いかけやの聲のよいのを女房よび

ためきって置いても女房又まける

あまりこびついて女房にやすくされ

しり切つていやすと女房しらぬふり

二つめの咳で女房にかんづかれ

あくるあさ女房はくだをまきもどし

ぶつつけるやうに駕ちん女房出し

おれもどうるいとは女房むごいやつ

よわむしとあくる日女房づつうもみ

うす〱は女房もの日をしつている

袖の梅あれども女房くらはせず

がんづいて女房そてふくを出して置き

まけこけて女房にまゆ毛付けさせる

五二べたを女房ざく〱汁へいれ

しうたんで女房のあてる大三十日

いしょうあらためあったばん女房逃げ

勝ちまけはともあれ女房本目はり

そのなりでいきなと女房聞きかぢり

関口りうでむねぐらを女房とり

いわし迄女房さかさに値をつける

女郎より女房は四両一歩高

間男をせぬは手前の妻ばかり

妻をさり鯛を半ぶんつり上げる

ちんがほえると女房を先づさがり

くわツ〱と炬燵へおこし女房待

しやうりょうと女房を留守に急な旅

神ばツて女房御はらい箱をしよい

やきながら女房のたべるかんろ梅

座頭の女房吸ふ度におツつける

只で無いやくしと女房見ぬいたり

ともかせぎ女房がまへばふえをふき

しんしのみ箱女房出すいいひより

さがし事女房はちうをとんで来る

のぼりには女房とこうの望みなし

御ン女房といふやつをつれて来る

ゆふべもてたを女房にらりにされ

桑をつむ女房にほれるばかな事

やくら下やくしゃと女房居る所

ねごとにて女房昼行く事を知り

ふんどしを女房さいそくしてあらひ

下戸へ禮いつて女房はそ引こみ

口をしさ女房に世をせばめられ

桑の木の下で女房をめつけ出し

たびのるす向ふの女房だきこまれ

実あくをしいあてて後の女房来る

うさんといふにほひ女房かぎ出し

ていしゅは三めぐり女房はうたぐり

ほれての多いいい男女房なし

はまぐりにひらめの女房ふとく也

柳公お出妻は留守妻はるす

四文づつついては女房おして見る

いい女房きかぬくすりをせんじてる

ふられたといふに女房聞入れず

女郎のはなしさい中女房かえり

いきを引取ると女房を引なおし

しちなんそくめつを女房あきらめる

やくかして女房火ばちにあたってる

乳の出る女房をあいた口へよび

よりかずが女房大きな口をきく

むりな事ひとり居なよと女房死に

ねり供養には女房を参らせる

だまかした大蛇で女房角がはえ

虫の音にもう冬の気が女房付き

いい男どぶから女房つれて来る

ごふく店天命しって女房もち

はかまこしあてを女房くやしがり

大晦日そこで女房は腹をたつ

意地づくで女房鰹をなめもせず

おもふしま勝チなと女房質をかし

北てきに女房は世をばせばめられ

茄子へたを糸に通して女房干し

桜へもやらぬと女房でかしだて

妾とちかい女房は徳なもの

内に寝た夜を女房にかぞへられ

飯をたきながら女房作ってる

かぶらずに来る女房は小附食ひ

藤豆に鯵をぐつ〱女房煮る

嬉しそうに抱へて女房質屋出る

ぶつくさと女房小袖で釈迦参り

好色な男はけつく妻持たず

旅見廻女房を遣ル実な人

うま〱と女房王子と化される

どつちらが馬鹿だのと戸を女房明ケ

ョ員が女房大えいどうを入れ

女房留守七十五日生きのびる

旦那の女房の体にて寺へ来

きげんよくやって女房ねだり事

届文女房が立とちよいと見せ

鼻の下タ女房の盗ムにくい事

足音のたんびに女房はねかへし

色キ情をさつて丈永カ女房あげ

仲人の女房同じく小ざかしき

傘で女房戸張りをはがしてる

金の置所ちよつ〱と女房かへ

日にやけぬものを女房へたびみやげ

出むあつて咄すに女房油断せず

おはくろは女房持出す十三日

鼻くそを取かけからし女房書き

大名と乞食を女房くやしかり

両国で女房すすりなきをする

あふなつしい女房をおやじ持

待宵にみぜんをさつし女房ふて

馬て居る癖に女房直キ出さす

いつためて置いたか女房帯をかひ

あつためてくんなと女房一本入レ

直キにまけたで女房はちつとかひ

あすのつらあてをかんがへ女房ねる

四五日もやうして女房他行する

あけすけでやるのが女房きついみそ

他人のうまさ女房はわすれかね

居ツつけに女房はもみちふみわける

わきも日がてるので女房やかましさ

六あみた女房ゆに行おしい事

どこへだか女房だまってしたくする

たび立チは川と女房をくろうがり

旅は右芋の女房をぬすまれる

たびの当主女房道つれこしらへる

竹馬を女房は廻り〱見る

しちやより女房くとくにほねがおれ

大引キつりの女房はひのへうし

一ト小言いふと女房はあらくほる

よくきけば女房半身代をもち

永の留守女房酒屋は直キばらい

花よりハ団子に女房ゆだんせず

九月蚊帳女房への字へてんを打

そっちへいってなと女房金を出し

狐付キ出来て隣は妻を去り

帯を直切る顔つく〱女房見る

小都合な金主を女房こしらへる

もめるはつ妻と女房が同居する

月落鳫啼て女房はらを立

大ぶりな咳には女房油断せず

泊り客女房ひそ〱蚊屋の事

作兵衛が女房弁舌ふるつてる

智恵が出て女房茶碗をゆでている

かん病も女房のならぬばかな事

いくとつて出なと女房見ぬいたり

りんひやうの薬女房はふとくしん

五六人目で柏の葉女房買

おどけのゆうな事女房かへてる

村女房子ぐるみ帯をしめ直し

こりはててええ見せものと女房置キ

こうか出て女房俄に臼を挽

やきかけてしらな女房にいじめられ

傘を半本女房かして遣り

あくる晩女房をしかる旅づかれ

六国もどく気女房の大晦日

やく女房午王をのめと下女をせめ

伊勢の留守女房度々網を引

もちつきの宵に女房に叱かられる

内イ済みでいけまぢ〱と女房居る

商売がしやうばい女房迄くすね

おもだったたいや斗を女房よけ

鎰をみな持て女房他出する

越中を女房がすると事がかけ

十ヲざしの直を女房にあてさせる

よくつづきなさると女房大きげん

茄子漬にぎ〱をして女房出し

あたらしい内チ女房は沖の石

気に成て女房のころす油虫

おろす沙汰女房高見で見物し

亥の日から女房さへざへしくくらし

徳むきな女房は筆で髪をかき

てんでんによい女房を持つ気なり

おまへはおまへはとむなぐらおせきとり

人よせにぬりたつて居る旅の留守

夫さへ知らぬ所をいしやが知り

傍若無人な事おめへ出て行な

やかずにいればやかぬとてかんをつけ

のきなさへ今日や明日では焚きつかぬ

去ッた去ッたといふけれどにげたなり

内儀の名むかししづあやなどといひ

内儀へはしよらずに出る草履取

内儀同士けんくわねの有る事と見え

お内儀の手を見覚えるぬいはく屋

お内儀の手をおんのけるいわし売

お内儀はおんまくじって蔵へにげ

お内儀をとなりへ遣つて筆をもぎ

御内儀をなぐさんで出る旅むかひ

お内儀は相談づくで又はがれ

御内儀は千六本に酢をかける

お内儀のうけとり発句書いたやう

御内儀がにらめつけたと連はいひ

お内儀はさつかりものとにげを云ヒ

御内儀をつめりおどけにしてしまひ

御内儀が若衆になりて皆ンな惚れ

御内儀の名は細見にまだ消えず

お内儀がたつとはさみの落る音

お内儀は師匠の留守に出てしかり

お内儀も手しや火吹竹にてうけ

御内儀と後家ときかれた事でなし

御内儀は七日とかぎる風をひき

お内儀はみこしと聞いて引こまれ

鼻紙で手をふき内儀酒もなり

ひやめしを見いし内儀米を出し

すい付てあつたら内儀ふいて出し

羽織着て居るお内儀にみなかたれ

針うりに左の袖を内儀見せ

寝下りととなりの内儀ちょっとひき

旅の留守ある夜内儀のいだけ高

さそふやつ内儀が立つとそばへ寄り

六つきだ見なと目なしに内儀いひ

とうふの湯御用に内儀手をあはせ

すつぱりと這はせて置て内儀起き

此家で生れた内儀まけて居ず

かくさずと御出と内儀見ぬくなり

いんぐわ立てしい〱内儀はらむ也

おまへのがほつとう人と内儀いひ

ぱつとした内儀のてい主りちぎ者

よそでへりますと内儀はいしゃへいひ

壱人居る内儀鼠の引くのなり

なんのまな箸がと内儀手で料理

樽酒をとう〱内儀やめさせる

女客内儀が留守でてれたもの

かの人にとなりの内儀二分無心

いつたのさばか〱しいと内儀寝る

はへぬきと見えてするどい内儀也

豆いりを大屋の内儀つかみそめ

やくとのやけつく出やすと内儀云ひ

めしびつをかかへて内儀わらい込み

何か出すそうでお内儀ふいと立ち

草市に茶屋の内儀に百かりる

おや分の内儀不動に待って居る

わたしをばばかした気さと内儀いひ

引づられながら内儀はしつけ取り

朝乗り内儀は紙でふいて出る

きよろ〱と男はすれど内儀せず

しつけ苧をひざであるいて内儀とり

雨舎り内儀のはらへゆびをさし

どんなのへ行くえと内儀聞きたがり

ふらないと首を取るよと内儀出る

てえげいにだらけなさいと内儀いひ

あしたおツしやれと内儀へ下戸渡し

能い日和内儀戸板をはたつかせ

御くたびれ扨お内儀はひょんな事

前だれをはづして内儀しひに出る

気に成つて負けると内儀叩付け

助言ならいやよと内儀駒を出し

おさいせん内儀むねからほじり出し

子にじぎををしへて内儀いとま乞

いたづらな後家内儀からふみが来る

あいちつとそうもと内儀言込める

松のうち内儀毎ばんのしをつけ

こいとりといふあの内儀の兄だ

男めしたきが内儀ののぞみなり

御一笑〱内儀がきさん

どっからの文と内儀からもぎ取られ

うしろからたかれて内儀分が立

万年屋十五年めで内儀喰イ

まくをとをすが家つきの内儀なり

さかさまな小紋紺屋の内儀也

ややまたせ内儀おんまくしつて居る

御そんじのやきてと内儀勝て逃

すげ笠で内儀しんしを張つている

のみ口を内儀はいけみ〱さし

五文がむきみすりばちうを内儀出し

板と水持て内儀がまかり出る

御てい主とねんごろが内儀へうつり

きせるのまん中を持て内儀すい

うい奉公内儀のはらに気が付かず

呑むかして潮は内儀きつい事

手のそろう迄と内儀の細え手

下女出入内儀も里へ五六日

雨みみの無いので内儀かねをつけ

去られたは愛想のいい内儀なり

からかわのぜにをぶつ〱内儀出し

米見竹取が内儀でやかましさ

あつちからのおなじみと内儀さばけ

棒組やどこの内儀もあのくらい

いひこめたそうで内儀がたたかれる

たわいハないのさ内儀は帰ツてる

子の口へしたんで内儀客へさし

にちる宿より憎ひ内儀の笑ヒ

から鮭をしごく古風な内儀かひ

むつかしさまるたを持て内儀まち

たなへ上げよその内儀のふ義ばなし

もみ所かわるいと内儀はじしめる

おしい事内儀珍ン魚を鍋へ入れ

かんくつに内儀三七日こもり

とまり客内儀初手からふのみこみ

状さしへささぬで内儀承知せず

いやらしさ夜宮のみせで内儀の碁

まじめな顔がおかしいと内儀いい

素人の女郎代金五両なり

 

継母子 附後家(後添)

まま母と見えて泣子にいつも勝ち

まま母のていしゆはどれも少しぬけ

まま母でいたしにくいとむすめ書き

まま母の留守に梓の声がする

まま母のむねにしなのの山があり

まま母のはていとやはり〱

まま母は銀のきせるでしやうこ人ン

継母の風聞ンおとなしくない仕方

ままおやは紙で折たる夜のつる

わんの中からまま母の顔を見る

若いうちだれもとけい母おもて向き

あじに義理たててまま母ひいきよさせ

もみぢではないとまま母そにんする

御めかけに出すをまま母恩にきせ

息子はつかうまま母はとかす也

むごい事たま〱の里継母也

針ほどを棒とは母の二ばんばへ

ふたえこんじやうのがきだと後の母

後の母ははとさしやうでもめる也

とつさんが見ている内はかわゆがり

人さまが来るとまま子を目へ入れる

わるいりやうけん子をつめるものをよび

大のもぐさをくださいとまま子来る

いま坂の白ロいをまま子喰ている

ままつ子をかわゆがるのも娵のうち

だまつてる蝉をままつ子持て居る

ままつ子は一日はなをたらしてる

はらのいためぬ子があるでやかましい

おれがのはみんなしぶいとまま子いい

ままつ子の膳笋のかみちらし

大せがきしてから後妻気がかろし

又伯母といふかとしかる後の妻

後の妻子に丸綿をいやかられ

くらやみのゆかた後妻ぞつとする

こわそうに後妻ひとつぬい直し

後妻ののぞみあんどん置て寝る

ささはたき後妻いとまをくれといふ

御美しかつたそうだと後妻云ひ

初手のおたふくめがと後妻へはむく

ふぜ着物着たと後妻夢に見る

尺八をふいて見ないと後妻いひ

後の妻衿守りの紐が見え

二三通後妻書置おツかくし

後妻の弘メもなくのんべんぐらり

皆おれが悪だと後の女房云イ

後妻の夢おたふくが出てにらめ

しやう進ンのたびに後妻ぎんみ也

口ふさげ後妻幟に一ツする

井戸へ手をあてて後妻聞たてる

先妻に世話をやかせた今のなり

後添は鼠が出てもびつくりし

後添の内儀いち子といぢり合ひ

しやうじんをすれば後添だがのだえ

後添のつれて来るのは女の子

あばただけ後添あまり憎くなし

つめりさへせぬと後添いい女

有りあまるけれど後添着ルハいや

とつさんがるすだとぶちなさると泣

天命はままつ子顔に五ツ六ツ

とつ様のそばへ斗カ寄るむごい事

白い短冊はまま子の天の川

御縁日真っ黒いのはまま子也

 

婚礼、結納、里帰り

婚礼を笑って延ばす使者を立

婚礼のあしたむすこは見世でてれ

こん禮を女郎賀したりきよくつたり

こん禮を打どめにするわたしもり

こんれいに娘をさがすとんだ事

御婚禮蛙の聲をみやげにし

おかしさはこん禮のばん鉢がわれ

ざつとした婚禮仲人ひとり者

馬でもやられずこんれいのはすなり

もちやそびで御先キを払ふ御こん禮

丸綿をきせぬと顔がやき切れる

まつ白な目かくしをするはづかしさ

丸綿をかぶせながらもいひふくめ

まわたで首をつつまれるはづかしさ

しばらくは顔をたすける綿ぼうし

いびられに行くが女の盛り也

よほどの婚礼渡しに二三ばい

一生に一度我が顔見ちがへる

一生に一度おとこへなめてさし

盃もなめてさすのははづかしい

丸わたをたしかにかぶる不二の夢

仲人へ四五日のばすひくい聲

仲人は母のうしろを度々のぞき

仲人はあばたの事をいもといひ

かいろうとうけつをなすのはつかしさ

おん礼はおやとむすめもいたひ事

蔵も隣のだと仲人しめられる

こんにやくと酢で仲人しあへられる

ゆひのふとおつ手と道で行きちがひ

ゆひのふが来ると伯父とはふわになり

結納を茶屋から申し訴人する

丙午遠い所から結納が来

はづかしさ毛受に顔をかくすなり

はづかしい顔へてつちりもりつえる

これからは峨眉をひそめぬ耻しさ

からかつた上で三つ組貸してやり

相性は聞きたし年はかくしたし

持ちなさい女は後でふけるもの

治る御代こそ目出たけれで茶飯

もちやれだが当りさわりのある女

はらんだでそうだんずつかく出来

客分をやめねばならぬはらになり

おはぐろをくんなと顔をもふかくし

新枕程なくごうんごんといふ

吉日がここにも居るとこそぐられ

高砂の切はおし付け寝かす也

御首尾よく出れば娵入のしゆんはづれ

高もりはくへぬものだと母しひる

村中のよめ入りへかす無事な馬

ゆたんからするめの足が少ツと見え

耻しさあかのまんまにとと添へて

耻しさするめ木口切でのみ

年禮にもも引のいる縁を組み

里帰り夫びいきにもうはなし

里がへりとなりへ寄るが思ひ也

里がへり何やら母はききのこし

里がへり人にあはぬが不首尾なり

里がへりしたらさはぽんだも知れず

里がへりはなさぬことははは聞かず

里帰り荷の付イて来る気の毒さ

里帰りぼかしは馬に鈴がなし

ひとりびとりに毒の来る里帰り

先ツ足をのばしやれやと里帰り

松茸の夢こんれいとうばはんじ

あみだの光はおしつめたこん禮

物の味一日しれぬ耻しさ

末永クいびる盃ばばあさし

茶に酔ふたふりで丸わた姉にきせ

一生の顔を目出度赤め合ひ

 

持参金、痘痕及醜婦

持参金疱瘡よけの守りにし

持参金うにこうる迄のんだつら

持参金よめなけなしの鼻にかけ

持参金すわつた所はうつくしさ

持参金買はぬむす子へむごい事

持参金からき命をのがれたり

持参金見合ひに出るは何事ぞ

持参金吉日に見るかほでなし

持参金せないとおもてざたになり

持参金いとやんごろのあるのなり

持参金今にぢばれがひかぬ也

持参金おはぐろししのやうにつけ

持参金はなはあれどもすじがなし

持参金わつちや片わとむずかしさ

持参金出るはれ見世で笑止がり

持参金せいが半ぶん高いなり

持参金口が二つ多いなり

持参金なんぞといふとほうへかけ

持参金女とおもやはらが立つ

おやの目があかぬで美女の持参金

すりこ木でこついたやうな持参金

午ならばつけて行はづ持参金

婦人の部へは入レられぬ持参金

我はかり剃をおしがる持参金

博物志にも在りそうな持参金

やもめでおくがふびんさに金に金

いま〱しいふくの神は持参なり

顔はさるからだはぶたで持参なり

大持参寝小便杯たれる也

たたさへもけんな娘にかねをつけ

おたふくめだまれと持参しかられる

金を貰ふにつき娘がついて来る

是れは百両と申す嫁にて候

千金の娵一ツこくをぬかすなり

あたい百両一こくをぬかすなり

娘が付でもらひてなし百両

壱人の娘あり持参壱百両

まよふまいものか持参とはだか也

一ト人の化ものあり土産百両

死ぬまでのしよい物手取り小百両

尻がちつとまがつたで二百両

持参のつくを一ト目見ていやといふ

うるささは持参やつぺしつめる也

おかしさは持参いのこに見合なり

さる時は九十両ではすまぬなり

きりょうよい持参をと母おんな也

百のくち十両ぬけた娵をとり

百両はきえ安いがあばたはきえず

先に目が二つあるから金をつけ

百両はなく成り顔はのこつてる

百人並のきりょうだに金をつけ

百両で一生あかんべいをされ

百両を男からとるうつくしさ

あたい千金でかたわの嫁をとり

出ろなら持参家ぐるみしょい出す気

とれ程わるふかと持参も見合

又さられましたと持参なれた物

百両で綿に包んだものが来る

足が不揃で百両もつて来る

持て来た娵いやな事いやといふ

おかしさは持参怪談本をよみ

弐百両持て行どにこまつてる

外聞のわるさ持参が孕んたり

弐百両か芋を買て一生くひ

名を取ふよりむつかしひ娵をとり

心ン外な事金つきを娵にとり

くわいぶんがわるいに持参だいて出る

鬼かいんにや人からんえ持参なり

大あばたねて居る金がうごくなり

先キの目も一ツて持参ンちつと也

持参でも有るかと人にうたがはれ

持参のつくがござるがとふしつけさ

得がたき金去りがたきよめをとり

ふきりやうなよめゆかん場をもつて来る

もめるはず茄子を一つ持参也

百両で綿に包んだいもが来る

秋風もふせぐ持参の金屏風

娵入の時もあばたは荷がおもし

花嫁を百貫道具だとほめる

百両をよめに預けてこわがらせ

ぐわいぶんをすてことよふの娵をとり

去る事のしにくい娵を暮によび

百両の口はふる程白あばた

口惜さ無塩の娵を暮によび

子細ありげな女房を暮によび

二十五の暮に持参をさづけられ

年の暮明けてくやしき娵をとり

わるいはず両うでになる娵をとり

十露盤で貰へば娵もげびる也

たりひづみ金で直した娵が来る

無塩君呼で身上立直し

夜が明てうんざりとする娵を取

あれをまあ娵で假とてわしはいや

此あばた見つけなんだと中のよさ

ああほしいなア百両に人だかり

欲の世の中持参に先ンがあり

いけよくの深いあまだとあばたいひ

つら中が厭でむすこいやといひ

あばたとにげたで評判がわるい也

いもやおはぎにねめられるいい男

ぶちのめすたんこうがんち大あばた

盃の廻りじまひはあばたづら

袖頭巾菊名もつみを作らせる

うり物だのにまつかちやあばたなり

大あばたこんどもくなし三十四

牡丹餅のくせに黄粉をたんとつけ

大あばた何所ぞ一つは惚れた所

持参のない化物ではじまらず

一ツ目かかあに毎晩おどされる

さしからぬ事は持参が持参也

年ン明てます〱目立あばた也

百物語つまつて持参をいひ

どふいふわけか大あばたを只よひ

労咳を病むとはあはた道理也

大あばた亭主のつらをはりに来る

ほた餅に目口のついた運つよさ

片タ目いからして娵わがままをいふ

妹を見せてあばたを〆させる

むごい事伯父ばけものをただよこし

十両の礼金とんだ顔の娵

目出度もらふ牡丹餅はかねが付き

大あばたさるにもほねが折れる也

師走来た娵打置ずつかわれる

馬子にもいしやうと持参をほめる也

持参金あばた多少にわりが有

持参金松川氏のむすめなり

名をわすれたのであばたが用に立ち

くどかれて菊石うたがひ深い也

五たい不具にして百両持て来ル

いもが子に屋しき一箇所のけて置き

そばかすが有るで三評通りかね

村ぢさんいろりへのめり込ンたやつ

金ばかりなればだれでももろふ也

いま〱しいふくの神は持参なり

いけよくのふかひあまだとあばたいい

金びやうぶ明けてあばたのさんぷ出る

 

後家

後家の義理いいへ〱で小半年

後家の気は仏の弟いやな事

後家をたてますには糸のひきて有り

後家の文子もりたのむが越度也

後家を手に入れて子孫のほねがらみ

後家琴えんりよなさいと支配人

後家あまりきれいな口をいい通し

後家のおしきせもりそだてますといひ

後家の流産はねられたやつがふれ

後家のとしうちばにあてるいやなやつ

後家のしち男ものから置きはじめ

後家のいろ先年五両出したやつ

後家ぢみにつくつてけつくこのましい

後家が来ておどり子みんなさがへ行き

後家ここをよんでくんなとちツと出し

後家の髪此世で遣ふほどは置き

後家の世になツてどうやらかうやらし

後家の下女穴ほりなとと深イ中カ

後家の下女納所の部やで数珠を切り

後家の下女かのまねをしておん出され

後家と坊さまこち〱とした同士

後家へ出すかけま壱本つかい也

後家の世談しすぎて大屋うたがわれ

後家どこへ行のか数珠を置て出る

後家を立やすと勝手な事をいい

後家で居る方が気楽と思慮深し

後家の髪目立ぬやうに切りはきり

後家にならないからがずるや也

後家とふところてやふ入り他行する

後家のともひんやりとしてどくづかれ

後家の供くりでゆすつて酒をのみ

後家のとも気にはたらきの無い男

後家の内男の声で鰒をよび

後ロの家は方丈へあけわたし

若後家のふしやうぶしやうに子に迷ひ

若後家のこすいでみんな貸なくし

若後家の剃たいなどとむごがらせ

若後家のあにこうとうをこのまんや

わか後家は佛の兄をうるさがり

若後家のたよりにおつてやりたがり

若後家はごうはらそうに孫をだき

若後家で七日〱のにぎやかさ

若後家はしたく金にていつたやつ

若後家はあばたへすわるごふく店

若後家はいかいくどくとくどかれる

若後家の今にもしれぬ口をきき

若後家はこれきけかしにかん〱

若い身で安請合の後家をたて

小力が有るで若後家じやれに成り

金がつづかぬと若後家地をかせぎ

いよおばばさまと若後家いやがらせ

すめぬこと若後家五つゆびををり

いやならばいいに若後家いけんする

和尚色衣で若後家に誉まれ

いつそやろうに成りねへと若後家

口説いいやうに若後家取廻し

ひけうな色男若後家にかり

其数珠を切なと若後家をくと起

くときそんじても若後家怖く無し

だまつていなよと若後家金を貸し

解ケ安い帯を若後家しめて居る

あは何両といわれ若後家ハちぢみ

後家に成ても養盲金日に三分

よし町で客札貰ふ後家の供

何申しやうと後家の供はいひ

よし町は和尚をおぶい後家をだき

たより無イ身さとすをかう若イ後家

青物の禮に廻るはにわか後家

掛とりの手をひいて行くにはか後家

わる口に耳なれている後家のとも

能い後家がなじみおかまを起す也

能い後家が出来ると咄す医者仲間

俄か後家大ぜいつれて牛をよけ

わるがたい後家とは見たて違ひなり

かたい後家男をたててやらぬ也

わるがたい後家でたん家へばつと知れ

かたい後家股へめぬりをせぬ斗り

かたい後家くどいて寺のさびれ也

きやうさめ貌でくりを出るかたい後家

しんざすでおつぱしらかすかたい後家

是からは身がふりよいと憎い後家

きむすめ迄をそそなかすにくい後家

秋のまん中に大きな後家が出来

あれとかとあきれるやつと後家は出来

やめて居りやいやさと後家は出来かかり

いもじか白いので後家出来かねる

武士のけんくわに後家が二人出来

かの後家が来たと薬屋の窓でいふ

あの後家の数珠でぶつたが初手の事

かの後家がさまたげますと仲人いひ

あの後家と大屋そも〱からの事

焼香を先へしたので後家と知れ

両袖をさがして後家が数珠を出し

稽古所も出してやろうと後家の文

針売のいらざる後家を立て通し

どこでどふ習ふて来たか後家の拳

はぢをかかせぬのが後家のおちど也

帯に手をはさんて後家ははぢしめる

はやまつた後家入れがみで盃し

無い事をいふ世の中と後家はいひ

姑ばば後家をたてたがきついみそ

二町程つづいたが後家じまんなり

かけそくにならないやつら後家に付き

朝帰り後家待うけてあなどるか

田舎後家あんにすべいと髪を切り

水晶を後家長とくはええ持たず

一生のふかくは後家のうつくしさ

だんぎ場を後家にくい程取廻し

百里程はなれて後家の相手なり

死ぬものが損とは後家へのあてこすり

あくせくとぬつても後家はふいて出る

それかして後家たいそうな枕する

間男はしまいしと後家大丈夫

いつもお若いとは後家へあてこすり

先づ息子さまさと後家の下女はいひ

御内儀と後家ときかれた事でなし

人目をおもつたは後家初手の事

うつくしい後家方丈のしつに入り

蔵たてた後家口ひろい事をいふ

是からは鬼に成りなと後家にいひ

ひく事をもつぱらとする後家の色

もつぱらに衆道へ通ふふとい後家

そろ〱と後家を邪情へすすめ込み

色をとこ引もくでする後家と戀

ぞくの気が離れぬで後家目立ツなり

薬屋の地蔵のまへで後家に成り

おちなんとする事あまたいひ

桃色の上下後家のなじみ也

おとなしい後家に四五人はらを立

大口をきぐのが後家のすがれなり

あの男瘡けがあると後家は云イ

あきらめのわるいが後家を立て通し

今は何をかつつむべき後家はらみ

吝しよくな後家山わりで茶やへ来る

何やつのしわざか後家の高枕

袖口へたらりと下げて後家は出る

あじきある世の中で後家面白し

よしのとげおれこんで後家大さわぎ

わるいこた云ひあてる後家孕み

するものは日々にと後家さかん也

お釜のざく〱を後家は買ニ来る

おかしさは皆がねらつた後家が剃

余の後家とちがうと孟母はりのける

かたい後家なぞをとくのは不調法

目をくぼませて後家の男は逃ゲ

惚れられるほどは残して後家の髪

すいりやうをして若後家くどく也

思い出しますとは後家のすきなやう

平ツたくいい出せかしと後家思ひ

何レといふ病イか後家は乳が出る

あつたら後家をただ置くと知らぬやつ

十両一番の金を後家に借り

高慢な後家地男はきらいなり

あれまでの寿命と後家のほぐれ口

もう後家をやめねばならぬはらに成り

なんの唯居よふと後家をそしる也

当分はのりもの町を後家とおり

うわ気後家男わらべを相手どり

ごうざらし後家に二度迄つつこまれ

まつい事それもそふだと後家おもひ

つまくるは後家百八かまんはちか

百八へ糸を通して後家ハ持

目つぶしを後家百八を持って居る

十八ぐらいの鬼では後家たらず

あいんぞうは後家になる気で請出され

人参のチしつたたか後家はもち

蓮を見にむす子を誘ふいやな後家

好キな後家ころんでも只おきる也

うらぽちをくわんへ入れたを後家忘れ

錦の直垂を着そふに後家作り

まづい事後家さつぱりとあきらめる

数珠さら〱とおしもんで後家だまし

すりこ木をはりのけて後家はじしめる

生酔を後家はけいして遠ざける

かとく公事後家くどかれた事もいい

こしかわら作りの家へ後家は入り

ふりこんで来た後家たちにまんま也

せみとほた餅とりかへて後家たすけ

とうぞして仕廻つたが後家ちちが出る

かんふつや後家へいやみで弐分かりる

どこかものに見せるとて後家つくり

大くわんしやうしふ若後家とものをいい

気みじかな事をして後家大こまり

むす子ええそうだん後家にもみぬかれ

たしかなるりんぢゆう後家のきみわるさ

度々後家に成つたは馬の内侍也

せいが高いよと若後家出来かかり

いたづらな後家内儀からふみが来る

憎い後家佛が口に付いて居る

髪をそるゆいごんは後家よしにする

あの後家は堅いやつじやと色がふれ

あら後家へ出這入をして毒づかれ

前九年後家にせぬのがみやげ也

いいのさと後家しんるいと不和に成り

その形でりで後家のさじきへ顔を出し

さつとした所が後家はあのくらい

本堂に飾ったが後家じまん也

ぜんぴやうは後家の目ぶちのほくろ也

一ト袋証文持って後家歩行き

是うらは数珠と思ふをそそなかし

信女の月をよどませる和尚なり

あらぬ事亭主が死んでからはらみ

石切りに見知られる程美しさ

ぬかだつて方丈さまは御宿かえ

かんばん数珠をしてでる憎らしさ

ぬりたてて佛よばりのにくらしさ

てい主が死んでにぎやかな内に成

あの後家はひだるからうとおろかなり

若後家にずいきの泪こぼさせる

きつい事茶筌で立る貞女なり

うしろ見にあやうく見える茶せん髪

あきらめがよすぎて後家の憎らしさ

いらぬ事いますがごとくつくりたて

推量をしてくれかしに後家作り

近ひうちごんせと後家を送る也

ひのへでも無いのにころす美しさ

はたられるのが無き霊へきのどくさ

後生のわるいしやうもんをごけはもち

しやう香を据膳でする女施主

ふして(おもん)みれば後家ああほしやな

どこでどふ習ふて来たか後家の拳

 

瀬田問答成る

銅脈若二大家風雅梓行せらる

俳懺悔(奮國)

冬かつら(梅人)

 

 

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